共同贈与コミュニティ「新しい贈与論」は、江北図書館に67万円の寄付を行ないました。
新しい贈与論では毎月会員の投票により宛先を決定する共同贈与を行なっています。2023年2月は「探す」をテーマに推薦を募集し、「ウィキメディア財団」「江北図書館」「認定NPO法人難病の子ども支援全国ネットワーク」の3候補があがり、立花香澄さん、阿曽祐子さんの推薦した江北図書館が最多票を得ました。
推薦文は以下の通りです。
「探している」という状態は、「見つかっていない」とも言い換えられる。
見つかっていない状態を受け入れることは、大抵の場合、苦しい。
私たちは、「なぜここに?」と生きる意味を探し、「どこかにあるはず」と居場所を探し、よりよいものや状態を探し続けて生きている。「見つからなかった」と割り切れない探しものは、特に、つらい。しかし、すべてが見つかったとき、私たちは幸せだろうか。
「探している」からこそ、「見つかっていない」からこそ、私たちはまた一歩を踏み出すことができる。何も探さなくてよくなったとき、私たちは絶望を感じるのではないか。
そう考え、私たちは「探している」ことを、もっとポジティブにとらえたいと思うようになった。「見つかっていない」状態にあることを幸せに受け入れることができれば、私たちはもっと健やかに生きていけるのではないだろうか。そこで今回は、「探す」を、素敵なもの、ポジティブなものとしてとらえるための推薦先を考えた。◆推薦先:江北図書館 ~地域が守り続けてきた滋賀県最古の私立図書館~
http://kohokutoshokan.com/たくさんの本の間で、どの本を手に取るかと行き来する時間は格別な時間だった。私がまだ知らない世界が潜んでいる。数多ある中から、たった数冊を選び抜く只中にいる私は、普段の何もかも忘れ、ただ一点に向かうことができた。見つかっても見つからなくても、その時間は私を幸せにしてくれる。
推薦人Aが暮らす滋賀県に県内最古の私立図書館「江北(こほく)図書館」がある。
明治以降、日本に図書館設立の機運が高まるなか、伊香郡余呉村(現長浜市余呉町)出身の弁護士・杉野文彌が「未来を支える子どもたちと地域に暮らす全て人たちの文化向上のために」という想いで設立された。明治39年のことだった。当初は、伊香郡役所の支援も得てスタートし、地域の青少年の知的啓発に大いに力を注いだ。昭和の大恐慌、第二次世界大戦による資金難や後継者難で多くの図書館が閉鎖されるなか、何とか持ちこたえ、若者たちに図書と触れる機会を提供を続け、「貧者の一灯」として地域に存続してきた。今や、図書館を巡る環境は大きく変化した。インターネットで手軽に書籍が手に入ってしまう時代である。設立から120年近くを経た江北図書館に建物の老朽化という課題が迫る。現在の図書館法により公的資金を受けることができない私立図書館は後ろだてがない。
「地域に身を置く図書館の役割とは何であろう?」
地域の人たちが再び立ちあがり始めた。理事やサポートメンバーを中心に、未来に残すための手入れが行なわれている。
ここには、多くの人たちが、未だ手にしていない「知」を求めてやってきた面影がある。喪失に直面しても、なお「この図書館を残したい」と願う人々は、かつて本の間の渉猟を楽しんだ子どもでもあったはずだ。先達が与えてくれたその体験を途絶えさせるわけにはいかないのだろう。
はかないながら「探す」の意味を問いなおす図書館と、その意義が「見つかっていない」からこそ残さんと動く地域の人々に敬意を表し、ここに推薦したい。『江北図書館の建物について紹介します。』
https://www.youtube.com/watch?v=eElxL4bNk_g
投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。
本当に個人的ですが最近図書館のヘビーユーザーで、図書館に恩恵を受けていていつも使っている図書館への寄付を検討していたところでした。探すというテーマに図書館というのも、とてもしっくりきます。(横山詩歩)
IT業界に身を置いてはいるが、図書館に支えられて育ったので、図書館を肯定し続けたい。そして、図書館が、今後のあり方を探している状態も肯定し続けたい。人生をやっているとだいたい未解決しかないし、常に探しているので、人生観と被るからかもしれない。図書館も要るか要らないかじゃない。そう応援することで、自分を肯定したいだけかもしれない。(中村雅之)
公共施設や公共スペースの役割の再定義が行われている昨今ですが、その中でも図書館は特に、情報や書籍がオンラインで簡単に入手できるようになったことでより議論があるかもしれません。でも便利に情報が手に入るようになったからと言って、本を読まなくて良くなったわけではないし、本がネット注文で簡単に手に入るようになったからと言って、良書に出会えるわけでもない。そんな利便性を超える何かがそこから生まれるからこそ、江北図書館を残そうという動きがあるのだと思います。
私たちは日々の生活の中で、公共の場を次世代に残そう、そのために支援しよう、ということはあまり考える機会が無いように思います。それはきっと、そこにあって当たり前のものだと思っているから。ですが、このままでは存続ができない、という危機に直面した時にはじめて、その施設やスペースから得ていた恩恵について、考え直すのではないでしょうか。
120年もの長い歴史を紡いできたこの図書館は、きっと図書館の機能を超えた役割を地域で担ってきたのだと思います。また、基本方針にも、これからも「地域の未来に貢献する」という役割をこれからも担っていく場所であるということを明記しています。こういう場を守り、繋いでいくことがどのように地域の未来を支えていくのかにとても関心が沸きます。
図書館という場が、地域づくりの拠点となる実践に期待と応援を込めて、一票を投じます。(浅井美絵)
寄付を行うことでのインパクトが大きいと感じました。また、このような良い場所を1つでも残して行ければと感じました。(福原寛重)
江北図書館のような、いろんな地域に根ざした私設図書館があればいいなあと思い選びました(中島真)
私立図書館という言葉は初めて聞きました。「私設」だと、個人のこだわりのコレクションの展示、あえて「立」を使うことで公共財の意味が感じられますね。さて、クラファンのサイトの、今後の方針についての記述、当を得ていますが、地元に閉じてしまうと、人口減少でいずれなくなってしまうのではと思います。湖北地域→滋賀県や福井県、京都と、外に開く「何か」を、育てていくことも考えてみてはと。決して地域外の業者に丸投げするのではなく、です。(藤岡達也)
図書館には多くの知の宝が保管されていて、本を探すことを通じて新たな発見や出会いの機会が提供されています。それは、インターネットで探すことでは出会いにくい発見や機会です。地域から図書館が失われると、そのような機会がなくなってしまいます。地域の子供たちから機会がなくなるのを防ぐと同時に、図書館で探すという行為が持つ価値に光を当てる一助にもなればと思い、江北図書館を推薦させていただきます。(山浦清透)
東京で育ってきた私にとっては、当たり前に図書館が近くにあるものだったため、今回の推薦文を読むまで、図書館が存在しない地域があるとは思いもしませんでした。また、私立図書館という存在も初めて知りましたが、その歴史的な成り立ちや、地域における価値はとても貴重なものであるように思います。
自分が子どもの頃に図書館に毎週通った体験が、今の自分の一部を形作っているため、江北図書館が、地域の子どもたちにとっても、そういう場として存在してほしいという願いを込めて票を投じたいと思います。(広井健一郎)
成長した何かに「なる」ことだけでなく、問いを持って「ある」ことの意義を照らしてくださる江北図書館に投票します。最後の一文に強く心が揺さぶられました。効率や成果を当たり前のように求めるばかりでは、意味や役割を問い続ける存在は窮地に追いやられてしまう。今回の場合はそれが「私立図書館」という姿でしたが、翻って一人ひとりと社会の関係にもつながるものだと感じました。(稲垣景子)
かつてこの場で兵庫県の私設博物館を推薦したことがあります。今、生死に直結するような活動すら「まず自助で」と言えてしまう時代の空気があり、一方で公的文化施設に民間のノウハウをという流れがある中、文化・教育分野での活動を民が行うことの意義の見えづらさを感じます(たった今も感じています)。江北図書館のHPを見て、明治中期の日本に図書館設立の機運が高まった時期があったことを知りました。その「機運」を我が身に引き寄せて実感することの難しさ。それは日本が十分に豊かになったということの証左なのかしら。未来とか進歩とかを素直に喜べない自分(万博を目の前にしてすら)が「私たちはもっともっと新しくなるんだ」という希望の輝きを忘れないために、江北図書館に投票します。(本間盛行)
私立図書館という概念を今回初めて知りました。図書館法第26条では「国及び地方公共団体は、私立図書館の事業に干渉を加え、又は図書館を設置する法人に対し、補助金を交付してはならない。」とされています。これは「干渉されない自由」の代償として、多くの寄付が私立図書館の存続に必要だと考え、第一希望に選びました。(今田公基)
本が大変好きなので江北図書館に投じています。私も図書館にはかなりお世話になって育ちました。ど田舎で塾などの教育機関が整っていなかったので、図書館で参考書を借りてコピーして取り組んでいました。それ以外にも、田舎では出会えないような価値観が記された本に出会ったりと、田舎だからこそ図書館は私にとって重要でした。私の地域の図書館は人口減で閉館してしまいましたが、江北図書館には存続していただきたいです。(中村祥眼)
自分とは縁もゆかりもない場所の古い図書館。一読した際に、寄付の候補からは外れていましたが、youtubeを見て胸を撃たれました。素敵な図書館をイキイキと紹介する理事の皆さんの明るさ。この図書館が大好きだと言う気持ちが伝わってきました。(鈴木亜香里)
HPにあった「 私立図書館でなければできない図書館活動は何か、を見つけ実行すること」ということが、その施設の存在意義というものが開かれているというところにこそ、その図書館が図書館たらしうる自由になるのだと思いました。時代や人によってその図書館の存在意義が開かれていること、そういった開かれた意義というものにこそ寄付であったり、新しい贈与論の活動にあっているのではないかと思い、江北図書館を選びました。(古川哲)
江北図書館、地方で育った身として、本に人生を変えてもらったといっても過言ではなかったので、時間軸を遠くに置き、贈与を未来に投げるような感覚になり、時間軸の長い贈与をしてみたいという気持ちから第一希望としました。さらに、自分でも本を読む文化を育てるために運営している喫茶店で本にまつわる取り組みを自分でやってみて、文化を育て、継続することの大変さを身にしみて感じているので、やはり歴史に完敗しました。推薦文の「探している」という状態は、「見つかっていない」とも言い換えられる。という一文にやられました。書き出しが素敵でした。(東詩歩)
このコミュニティとして寄付するのであれば、コミュニティの流れに乗っかりたい気分の自分がいます。自分の主観で評価して良いと思ったところではなく、推薦文の言葉が今のタイミングの自分にフィットしていると思ったから、図書館にしました。(綿貫美紀)
図書館を1位とした理由は、寄附という行為を通じて、お金だけではない貢献(おせっかい)ができると考えたからです。当該図書館への共感を抱く一方、このままでは持続的ではないのではないかという感想を持ちました。そこで、「お金の贈与」という意味での寄附というよりは、関わり・おせっかいの契機としての寄附というツールの可能性を考えて1位にした次第です。(嶋田暁文)
新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。現在は新規会員も募集中ですので、ご興味ある方はトップページよりご確認ください。
運営
法人名 一般社団法人新しい贈与論
代表理事 桂大介
設立 2019年8月1日
ウェブサイト https://theory.gift
連絡先 info@theory.gift
メディアキット ダウンロード
「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。