観森へ寄付を行ないました

共同贈与コミュニティ新しい贈与論は、「観森」に対し71万円の寄付を行ないました。

観森

森を観ること。 それは美しい造形や巧妙な戦略の世界へ、畏敬の念と共にアクセスすることを意味します。 森を観て、感性を磨き洞察を深める。 そして自然の美しさをネイチャーガイドやプロダクト、様々なメディアへと加工し発信する。 こうして「観る時を増やす」ことをミッションに、北海道白老町を中心として活動しています。

新しい贈与論では毎月会員の投票により決定される寄付である共同贈与を行なっています。2022年8月は「匙」をテーマに推薦を募集し、「NPO法人グリーンウッドワーク協会」「特定非営利活動法人おりづる広島」「観森」の3候補があがり、阿曽祐子さん、東詩歩さんの推薦した「観森」が最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。なお推薦文および投票理由では、「観森」にかわって当時の名称である「野だて」が用いられています。

●「匙」とは

 私たちは日常の中で「匙」という言葉を使うことはほとんどない。たいていはスプーンという言葉で済ませている。改めて「匙」について考えを巡らせてみた。
 『銀の匙』という中勘助の小説を、手元に持っていながらずっと積読状態にしてしまっていると推薦人Aが吐露した。この小説は、なかなか開かなかった古い茶箪笥の引き出しから見つけた銀の匙をきっかけに幼い頃の思い出を辿る話のようだ。
 そうなのだ、匙は懐かしいと推薦人Bが吐露する。子どもの頃に風邪をひくとお医者さんが甘い飲み薬を処方してくれた。この時とばかりに兄弟から母を独占して、匙で薬を飲ませてもらう喜びを感じたものだった。苦さと甘さ、相反する気持ちが交錯する時間だった。
 手が届きそうで、届かないような非日常のもの。憧れと同時にもどかしさも内包している、それが私たちにとっての「匙」だ。

●「野だて」について

北海道・白老町に佇む「野だて」。
野草民泊というキーワードは、全国の探求者を惹きつける。
私(推薦人A)は、この場所に通う中で「美しさ」とは何かというシンプルな問いを突きつけられた。
野だては、宿泊事業、自然ガイド、白老の自然を生かしたプロダクトづくり、町で唯一の移動本屋さんを運営している20代3人のユニット活動。
森を観る、五感で森を体験する。山椒を食べてみる。まだ若くてすごく辛い。木の裏をじっと見る。あまりにも身近で普段見ているはずなのに観ていないことに気付く。美しさについて互いに語り合う。森を出る頃には、世界が全く違って見える。美しいとは何かという問いが止まらなくなる。そんな自然体験を得た。
宿に帰ると、森で採れた野草でお茶を振る舞ってくれる。家主同居型の民泊で、ぼーっとしていると、なんだか懐かしい気分になる。近所のコンビニは0:00で閉店する。
居候本屋さんのまたたび文庫は、鮭の木箱を背負って町のお店や施設を日々転々とする。ここにはベストセラーは並ばない。店主の一癖ある選書が光る。
季節と共に移ろう生命体のような「野だて」、知っているという意識のおぼつかなさに手を伸ばしたくなる、そんなユニット、空間を含めて推薦します。

▼野だて HP:https://nodateyasou.life/

●「見ていく」生き方

 私たちにとって森こそ近くて遠い存在ではないだろうか。『森のくまさん』や『赤ずきんちゃん』など、幼い頃に親しんだ歌や話には森を舞台にしたものも多い。なのに、実は私たちは森にはそれほど親しんだことがない。
 「野だて」のHPに掲載された写真、そこにはたくさんの森の姿がある。私たちはいかようにでも森の姿を見ることができる。見ていないだけだったのだ。本当は大切なもの、見るべきものがあることを、私たちは知っている。なのに、積んであった小説をいつしか無かったものにする、母を独占する私の裏で寂がる妹の姿を見えなかったことにする。
 喜びと後ろめたさ、甘さと苦さ。私たちは、相反するもののなかで引き裂かれそうになると、つい忘れてしまう。推薦人Aが「野だて」で体験したのは、そういう相反をゆっくりと見ていくという生き方ではなかったか。そういう人と場所がこの世界にあること、私たちにも作れるかもしれないこと、それが私たちを生かしてくれる。

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • 長い期間都会に住んいることもあり、自分自身が一番実感の沸かないゆえに、面白く感じたのが野だてさんでした。推薦人の方が様々な気づきを得た自然体験は、逆に言えばそれだけ日常的に得られない経験なのだと思います。またウェブサイトやインスタで上げられている写真は綺麗で目を引くものでした。非日常な自然に接すれば必ず美しく前向きな体験を得られるか?といえば当然そんなことはなく、そこにはある種の加工が入るものだと思います。野だてさんは運営側の選び取るセンスも良いなと思いました。(河原塚有希彦)

  • これまで寄附先を選ぶ際、多くはその活動の社会的意義に共感して多かったのですが、今回の「野だて」についてはアーティストを応援するような発想で選ばせて頂きました。北海道白老町という舞台と、自然というテーマを軸に持ちつつ、プロダクト・本屋・民泊など変幻自在に活動されているこのユニットのこれからに興味を惹かれました。(朝野椋太)

  • 自然と触れ合う野だての雰囲気がよかったのでこちらに投票させていただきました。(三上遼)

  • 自然の面白さを知るということは、人の助けがないとなかなか難しいなというのを時々感じています。そうしたことを知る機会の創出を、詳しい方が体を張って民泊という形でやっているのは面白いと思いました。(中村雅之)

  • さて、今月も悩みましたが、「野だて」に1票投じます。「匙」がテーマでしたが、匙のようなシンプルで小さな方法で、自然という大きな存在の一部分をそっと掬い取り、誰かに届けるような活動に感じられました。推薦人の皆様、熱い推薦文をありがとうございました!(浅井美絵)

  • もう1名の推薦人と「匙」について語らう中で出てきた「野だて」でした。彼女の体験談を聞きながら「野だて」のホームページの言葉と写真を見たら、私の心は白老町に飛んでしまいました。その場所に身を置いて、恐いけれども、見ずに済ませてきたものを見たいと思いました。他の二つの候補も素晴らしい。折鶴のもつ二面性にはハッとしました。グリーンウッドワークの推薦文の「「知らない」ことほど、罪深いものはありません。」。これだと思います。(阿曽祐子)

  • webサイトを見て、とても魅かれたので投票します。いつか行ってみたいです。(鈴木亜香里)

  • とにかく写真と文章が美しい。推薦文を読み野だてのホームページを見ながら、もしこの場所にわたしが滞在することができたらと、思いを巡らせてみました。温かくてとろっとしたスープが匙でやさしく口の中に運び込まれて、日々せわしなく都市で暮らしている自分の身体中にじんわり染み込んでいる様を想像して幸せな気持ちになりました。地球環境との共存や、大切さについて学ぶ機会は数あれど、自ずと清らかで厳かな気持ちになれそうな雰囲気が伝わってきます。野だてでの体験が、またはじまる日々を少し変えてくれそうな気がします。いつか行きたいリストに加えました。(姜花瑛)

  • 森と一緒に生きていく、というところに美しさを感じました。厳しい大地である北海道ですが、美しさとともに豊かになって欲しいと思い、投票しました。(白川みちる)

  • これほど森にある美しさを探求できるフォーマットが揃っていることにおどろきました。自分もですがたくさんの方に体験してもらいたいなあと思います。(中島真)

  • 推薦先なので、やはり第一希望にしました。これまで、団体/企業などが続いてきましたが、ユニットのような生命体のような彼らに寄付をしてみることで、何が起きるのかが気になり、推薦してみました。また、推薦文にも書きましたが、文章だけでは分かりづらい活動だからこそ、彼らから贈られた「美しさとは何か」というシンプルですが、奥深い問いについて語り合うきっかけになればいいなと思いました。(東詩歩)

  • 「匙を投げる」という言葉には、悔しさとうしろめたさが強く含まれているように思います。本当は、小さな道具の先端に願いを掬って、対象と関わり続けたい。本当は投げたくない。そういったある種のあきらめの悪さ、愛情、雨垂れ石を穿つことへの執念のようなものを、推薦先のいずれもが持っているように思いました。今回は、その愛着への共感のままに順位をつけます。(加藤めぐみ)

  • いつもは「どこに寄付すべきか」を考えていましたが、今月は寄付を募集していない団体が多く、「ここに寄付することはどんな意味を持つのか」ということを考えました。たいした目論見も持たず、欲してもいない人にただ贈り物をする。そういう贈与の純粋さに戯れてみたいと思いました。他の二つも素晴らしい団体で、いつもと違う角度で、よく悩んだ月でした。(桂大介)

  • シンプルにどうやってこの寄付を使ってくださるのか、とても気になりました。 推薦文を読んでいるだけで、森の中にいるような感覚になりました。(成田好)

 新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。現在は新規会員も募集中ですので、ご興味ある方はトップページよりご確認ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。