一般社団法人認知症当事者ネットワークみやぎへ寄付を行ないました

共同贈与コミュニティ「新しい贈与論」は、おれんじドア実行委員会(一般社団法人認知症当事者ネットワークみやぎ)」に対し71万円の寄付を行ないました。

新しい贈与論では毎月会員の投票により決定される寄付である共同贈与を行なっています。2022年9月は「忘れる」をテーマに推薦を募集し、「NPO法人みなと計画」「震災遺構中浜小学校(宮城県山元町)」「おれんじドア実行委員会(一般社団法人認知症当事者ネットワークみやぎ)」の3候補があがり、広井健一郎さん、澤正輝さんの推薦した認知症当事者ネットワークみやぎが最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。

私たちは、丹野智文さんが代表を務める「おれんじドア実行委員会」を推薦します。

おれんじドアは、認知症当事者が自分らしく、生き生きと生活できる「安心して認知症になれる社会」を目指し、認知症の人のための相談窓口を開いています。
代表の丹野さんは、39歳で若年性認知症を発症した当事者でもあり、ご自身の経験を元に、おれんじドアを立ち上げ、現在は自動車販売会社で働きながら、全国各地で認知症に関する講演活動も行なっています。

今回の推薦にあたって「忘れる」というテーマから、「刻を忘れる」「風化」などの方向も検討しましたが、身近で聞くことも多い「認知症」という病気に対して取り組む団体を選びました。

認知症は、一般的に高齢者が発症することが多く、物忘れなどで意思疎通を行なうことが難しくなるため、「社会生活が営めなくなる」というイメージがあります。
しかし、65歳未満で発症する「若年性認知症」の場合、平均発症年齢は 51歳で、働き盛りで家計を支えていることも多く、発症したからといって、会社を辞めて介護を受けるわけにもいかないという現実があります。
また、身体は健康なので今まで通りの生活を続けたいという希望を持った場合にも、認知症に関する情報は予防や介護に関するものが多いため、当事者やその家族はどこに相談すればいいのかわからないという問題も存在しています。

おれんじドアでは、このような問題に対して、若年性認知症に限らない認知症当事者のための相談窓口や講演によって、当事者や支援者をサポートする活動を行なっています。

今回、私たちがおれんじドアを推薦した大きな理由のひとつは、「認知症当事者への優しさが、自立を奪っている」という、丹野さんの言葉でした。

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認知症になると、周りの人は少しでも症状の進行を遅らせたいと思う。でも周囲の優しさが、本人を陥れているところもあるんです。 当事者同士で話していると、『財布を持つのを禁止された』『一人で出かけるのを禁止された』という人がとても多いんですよ。なぜかというと、周りが失敗しないように先回りをするから。それは優しさなんだけど、結果的に当事者の自立の機会を奪っている。何もできない人にしているのは、周りの人たちでもあるのではないかと思います。
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当事者同士が話す場を作って、たくさんの人と会うと、本当に皆、よく話すんですよ。家族は、当事者に対して『この人話せないんです』などと言いますが、確実に話せます。できるのにできないと言われて、できなくなっているだけ。支援者はボールを転がしたりするレクリエーションが当事者を笑顔にすると思っているけれど、自分は『普通に誰かと話すこと』が、当事者を笑顔にすると思うんですよね。でもそれも、たくさんの当事者に会って気づいたことで、会わなかったら気づかなかったと思います
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周りが良かれと思って行なっていることが、本人の意思とは違っている。
さらに、支援者の間では、それが当たり前のこととして受け入れられている。
こういったことは、認知症に限らず、他の病気や障害でも起きているように思います。

丹野さんは「支援者はレクリエーションが当事者を笑顔にすると思っているけれど、自分は『普通に誰かと話すこと』が、当事者を笑顔にすると思う」と語っており、おれんじドアの活動は、当事者にしかわからない悩みや情報交換ができる場として大きな価値をもっていると感じています。

現在のおれんじドアの活動は、相談会などを中心に活動する他の団体と同じく、コロナ禍によって、対面での活動に制限を受けるなどの影響を受けていますが、当事者同士が会えないことのマイナス面を憂慮し、感染対策やオンライン開催などを続けています。

また、おれんじドアの活動モデルは、丹野さんの地元である仙台から始まり、現在は、東京、名古屋、岡山、徳島など、他の地域にも広がってきています。
2023年には、丹野さんをモデルとした映画の公開も予定されており、このタイミングでの寄付は、この問題を知る機会を増やす一助になるとも考えています。

丹野さんは当事者としての経験を持ちながら、支援者としても活動してきたからこそ、当事者同士がサポートし合うことで相乗効果が生まれ、それが彼らを支える家族のケアにもつながるという、新しい支援の形を展開できています。このことは、おれんじドアが目指す「安心して認知症になれる」社会にとどまらず、さらなる希望の連鎖を生み出す可能性も持っています。
おれんじドアの活動は、安心して病気になることができ、衰えられる、人生100年時代において誰もが生きやすい社会づくりのヒントにもなるように思い、本団体を推薦します。

【参考記事】

「自分で決めて、自分で動く」ことが当事者や家族の笑顔に
https://www.sompo-egaoclub.com/articles/topic/845

39歳で認知症になったパパと家族の9年間を描く「オレンジ・ランプ」23年公開
https://eiga.com/news/20220920/4/

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • 当事者にとって同じ境遇の先輩と繋がれることは、直ぐに役立つことも知れるし、励みになると思いました。当事者のお悩みは想像するくらいしかできずもどかしいですが、寄付の形で今回は関われたら嬉しいです。(宮崎あおな)

  • 急激な高齢化が進行する中で、認知症の方に制約を課し結果的に社会から隔絶するのではなく、社会として受け入れていく方策を考える必要性が高まっている中で、このような活動をされていることに非常に共感し、投票させていただきます。(上西雄太)

  • 子育てをしていると、子供の思いを後回しにして、禁止や過剰な予防によって先回りをすることで、失敗の機会を奪ってしまいたくなることが本当に良くあります。自分で考えてやってみて、失敗も含めて経験して、またやってみて、という日々の繰り返しが、人の生きる楽しみを生み出すサイクルの1つなのだろうと思います。忙しい日常を過ごしていると、ついついそういったことも忘れてしまいがちなのですが…。認知症の当事者でつながりながら、禁止や予防ではなく自分で決めて過ごしていくことを応援している、おれんじドアさんに投票します。(大政勇作)

  • 個人的に認知症に関心がありますが医療系の会社のソリューションばかり知っていたので、NPOとしての活動は初めて拝見し、応援したいと感じました。(中村タカ)

  • 認知症は今後日本社会の大きな問題になっていくと思う。おれんじドアは当事者が運営を行っており、当事者にとって本当に必要な支援が行われることが期待できると思う。また、今後は認知症に限らず、他の希少な病気に対してもおれんじドアのような支援を行う団体が増えていき、当事者が安心して暮らせる社会ができていったらいいなと思って投票します。(高城晃一)

  • 認知症の方が自分で訪ねられる相談窓口、そしてその応対をするのも認知症当事者というコンセプトを知り、今まで自分が持てていなかった視点に気付かされました。このような取り組みにこそ、寄付という形で支援を行いたいと感じました。(朝野椋太)

  • なかなか理解されにくい若年性認知症。どこにも欲しい情報がないことはどれだけ不安だったか。自分の居場所が世界に無いにようなものでもあったかと推測しました。他者と繋がってしか人は生きられないことを改めて突き付けてくれました。(阿曽祐子)

  • 今回は「おれんじドア」に投票させていただきます。周囲が優しさから行動を制限する事が、当事者の自由や尊厳を奪う事にも繋がりかねないという話は特に共感しました。この辺りのバランスは難しい問題だと思いますが、両親が高齢となった自分にとっても決して他人事ではないのもあり、こちらにいたしました。(三上遼)

  • おれんじドア実行委員会の推薦人です。認知症に取り組む団体は数多くある中で、おれんじドアに着目したきっかけは、前回の推薦時に知った、以下の言葉でした。
    > 障害者の周りにはさまざまな「利他的」な行為が行われているが、一見「利他的」な行為が本人のためになっていない、ということがたくさんある。
    推薦を重ねることが、贈与したいと思う団体選びにも影響するというのは面白い体験でした。本団体の活動意義はもちろん、個人的には前回の推薦とのつながりも感じたため、おれんじドアに投票したいと思います。(広井健一郎)

  • 今年70歳になった母が、認知症になることが怖いと口にするようになりました。私はそれを聞いて、そうか、記憶を失うというのは怖いことなんだと改めて感じるようになりました。それがまだ働き盛りの世代で仕事や家庭を抱えていれば尚更なことかもしれません。どの病いでも同じように、付き合い方や乗り越え方があるのだと思います。それを実践されている方の存在がなによりも勇気になるでしょうし、同じ当事者同士でしか分かり合えない事もたくさんあるでしょう。
    おれんじドアさんの活動は、当事者同士が、自分たちで生き方を選ぶ方法を分かち合える貴重な場なのだろうと感じました。わたしも「安心して病気になれる、衰えられる」社会を願っていますので、応援の一票を投じます!(浅井美絵)

  • 今回はどの団体も自分に引き寄せられる身近で重要な課題を扱われていて、出会えて嬉しかったです。その中でも認知症はいつ遭遇するのかわからないし、そうなった時にどうすれば良いのかわからないまったく手に負えないもののように感じられて、そんな状況の助けになってもらえるおれんじドアを応援したい気持ちになりました。(藤原麻耶)

  • 「安心して認知症になれる」というコピーに驚きましたが、誰もが抱える「忘れてしまうことへの恐怖」に応えたいなと思いました。。」(姜花瑛)

  • 若年認知症の方への支援をこえた、「忘れる」ことへの恐怖や不安という「呪い」から人々を解き放つ可能性を感じました。出会いに感謝です。(澤正輝)

  • 寄付金の使途や団体へのインパクトの大きさ、社会への広がりの大きさと寄付をする上でも軸が様々にあることを感じられた、よい初参加回でした。最初と順位は変わりませんでしたが、いくつもの判断軸が入り込んだ結果この順位になりました。特にどれだけ身につまされるかというところが大きいと感じました。自分もある日突然会社の同僚の名前が思い出せなくなったら…と思うとゾッとします。今回どの団体に寄付がされることになるか、分かりませんが、どんな広がりを持っていくのかに期待を膨らませています。(掛川悠矢)

  • 若年性認知症というものをなんとなく耳にしたことはありながら、これまでリアルに考えたことはありませんでした。代表の丹野さんが発症された39歳までわたしもあと少し。当時の体験談を拝読しながら、自分にもこういうことが起こりえるんだということを想像しました。もし自分がそうなったときには、同じ若年性認知症の方と話し合いたくなるだろうと思いました。丹野さんの活動に大きな敬意を表するとともに、今後さらにこうした活動を広げ、当事者をつないでいって欲しいと願います。(桂大介)

  • 認知症の当事者が自立して社会参加し続けられる、という取り組みの支援に価値を感じ、資金を投じたいと思いました。(志賀響子)

  • 誰かとの大切な思い出や、大切な誰かの存在そのものを忘れてしまうことの怖さ、ひるがえって、誰かに忘れられることの悲しさ。今月の「忘れる」というテーマを目にしたときに真っ先に思い浮かんだのがそのことでした。正直なところ「おれんじドア実行委員会」様の理念にまっすぐに共感できているわけではなく、「安心して認知症になれる社会に暮らしたい」よりも「認知症にならずにいたい」気持ちの方が強いです。でも、目を背けていた、先送りにしていた問題に対して、このような活動をされている団体があるのだと知れたことは、とてもありがたく、投票先として選びたいと思いました。(加藤めぐみ)

 新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。現在は新規会員も募集中ですので、ご興味ある方はトップページよりご確認ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。