新しい贈与論は、公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会に174万円の寄付を行ないました。
新しい贈与論では毎月会員の投票により宛先を決定する共同贈与を行なっています。今月は「骨」をテーマに推薦を募集し、「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会」「特定非営利活動法人アジア水中考古学研究所」「NPO法人 修復的対話の会」の3候補があがり、坂本治也、松井俊祐の推薦した公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会が最多票を得ました。
推薦文は以下の通りです。
「愚の骨頂」や「骨抜き」という表現があります。人間の愚かさや意志の弱さを指摘する際に使われます。今回注目した社会課題は、「意思の弱い愚かな行為」と思われがちなギャンブル依存症の問題です。
大阪のIR開発、水原一平氏の違法賭博問題、プロ野球や芸人のオンラインカジノ利用など、ギャンブル依存症に関連した話題は意外なほど多くあります。しかし、私たちは「ギャンブルにハマる人なんて、その人の自己責任でしょ?」とどこか冷めた目でこの問題を見ていないでしょうか。
当事者の声に耳を傾けてみると、実際にはその苦悩はとても切実です。薬物・アルコール依存と同じように、ギャンブル依存もまた「やめたくてもやめられない」病気なのです。
俳優の六角精児さんもギャンブル依存症に苦しむ当事者の一人です。その詳細は、https://addiction.report/YutoChiba/rokkaku-seiji2で語られていますが、印象に残った一節を紹介します。
「何でもかんでも『自己責任』で片付けようとする人がいるけど、僕はこの言葉が一番嫌いです。依存症は病気です。だからこそ、周囲の人や医療機関に相談することが大切なんです」
ギャンブル依存症は病気であるという社会的認識が薄いことから、治療などを受けることなく患者が孤立しがちであり、患者の自殺企図率は約7割にのぼります。
今回推薦する「公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会」は、ギャンブル依存症の当事者やその家族を支援する活動を展開しています。同会は、回復した依存症患者が各地で支援活動を行う「当事者支援部」の運営や、年間250名以上が参加する「家族相談会」の開催を通じて、依存症問題の解決に取り組んでいます。また、法規制を求める活動やアクセス制限アプリの開発を目指すなど、社会全体への啓発活動も積極的に行っています。
公営ギャンブルは天下り問題とも関連しているために抜本的な規制強化が進みにくいです。マスコミも関連企業からの広告収入を受けるために、この問題の追及に及び腰です。政府やメディアは当てにできない中、この問題は公益法人やNPOなどの民間支援者が積極的に取り組む必要があります。
「骨」は、人間の体を支える重要な要素です。しかし、ギャンブル依存症は、その「骨」を蝕むかのように、当事者やその家族の生活を崩壊させます。当会の活動に触れることで、少しでも多くの当事者が孤独な苦しみから抜け出せることを願い、推薦します!
投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。
推薦文のこの部分に共感、納得したので。「公営ギャンブルは天下り問題とも関連しているために抜本的な規制強化が進みにくいです。マスコミも関連企業からの広告収入を受けるために、この問題の追及に及び腰です。政府やメディアは当てにできない中、この問題は公益法人やNPOなどの民間支援者が積極的に取り組む必要があります」。ギャンブルに限らず依存症は当事者、家族や周囲の人、そして社会を骨抜きにして蝕む病理だと思います。(中嶋愛)
人が行う選択の多くに少なからずギャンブル要素があり、人はそれを楽しむようにできている(全てが精緻に予測可能な人生はつまらない)。そのように考えると皆が当事者である問題だと感じた。(佐々木優)
ホームページを拝見したときに目についた「緊急」「オンラインカジノ」「闇バイト」「自死遺族会」の文字。文字の羅列だけで、すぐにでも向かい合わないといけない社会問題であることを再認識してしまいました。(熊谷友幸)
依存症は病気である。にも関わらず、病気でないように扱われがちです。もしかしたらアルコールや性、犯罪なども含めて現代病なのかも知れません。きっかけは様々かもしれませんが、現状へのケアが無くて良い理由にはならないよなと思いました。(鈴木健人)
私は学生時代に雀荘で働いており、当時からギャンブル依存症の人間を数多く見てきました。ギャンブル依存症はとても身近な依存症であり、かつそれがその人あるいは周りの人間に及ぼす影響も肌で感じてきました。日本でもカジノ誘致の話が進む中、こういった負の側面もきちんとサポートしていく必要があると感じでいます。(三上遼)
依存症の問題は個人的に気になっていたこともあり、第一希望とさせて頂きました。(中川瞬希)
ギャンブル依存症の自死率の高さに驚きました。自分自身を被害者かつ加害者に追いやるしかない、孤独な苦しみがあるのだと感じました。当事者や家族を救う活動や社会を変える取り組みは非常に重要度が高いと感じ、応援したいです。(古賀翔子)
推薦人です。なかなか社会的な共感を得にくいこと、行政も公営ギャンブル運営との矛盾の中で積極的な支援がなされない中で、当事者及びその家族にとって命綱となる活動であると思います。ニュース等も増えてきて社会的な窓が開いている今こそ、活動が広がることを応援しています。(松井俊祐)
個人の問題だと捉えられがちだが、数多くの人が悩んでいる依存症問題の改善に貢献したいと思った(高城晃一)
身の回りにはギャンブル依存の方はいないですが、背景に肉体的、心理的な孤立・孤独があると思っていてこれからますます増えていきそうなので草の根から少しずつアクションしていくことは重要だと思い、応援したいと思いました。(日吉良太)
どれも魅力的かつ必要な活動で、判断が難しかったです。身近にギャンブルが原因で自殺しちゃった従兄がいるのと、テーマの換骨奪胎ぶりに惹かれ(笑)、ギャンブル依存症を1位にしました。(嶋田暁文)
依存とハマるの違い、あまり考えたことはありませんでした。自分だけに留まらない依存について、軽く考えてはいけないことがわかりました。(阿曽祐子)
“ホラホラ、これが僕の骨―
見てゐるのは僕? 可笑しなことだ。“
中原中也『骨』
いちど死の瀬戸際まで落ち、そこから生還する一瞬の快楽にこそ、ギャンブルの醍醐味があります。あるギャンブル狂いの作家(高橋源一郎)曰く、ギャンブルとは、負けるためにするのだそうです。苦労を纏った肉が落ち、ヌックと白い骨が出てくる。その骨を眺める自分。そこにはたしかに捨てがたい、最果てで掴む希望を感じます。
ギャンブル依存になる人の気持ちはよくわかるのです。そこからどう回復するか、その答えは自分にはありません。それほどギャンブルは世の理を超えていて、だからこそ、新しい贈与が手を差し伸べるに相応しいと考えるのです。
最後に、詩人の一節を置きます。ギャンブラーとは、きっとこんな気分ではないかと思うのです。
“蛆(うじ)どもよ!
耳も眼もない哀れな兄弟分よ、
見るがよい、
暢気(のんき)で陽気な死人が一人、
貴様等のところへいま来たぞ
放蕩の哲学者、腐敗の子、蛆どもよ
俺の遺骸を遠慮なく探し廻ってみた上で、
教えてくれ、死んだ上にもまた死んで
魂抜けた老いの身に、
残る悩みがまだあるか!“
ボードレール『悪の華』(前田ひろし)ギャンブル依存症、正確にはパチンコを「ギャンブル」としていないので、ギャンブル「等」依存症と言ってます。こういう詭弁を使うことが、行政による真剣な対応を困難にさせているので、この団体の活動はとても重要だと思います。今回は一択です。(藤岡達也)
患者さんの自殺企図率が約7割、という点に驚きました。親しい人の苦しみを見るほかには、自己嫌悪ほど辛いものはないと思います。依存症の方とご家族が、適切な支援を受けられることを願います。(加藤めぐみ)
冒頭「愚の骨頂」のフレーズが印象に残り、「骨頂」が「この上ないこと」の意味をもつことを改めて知りました。現代において「骨頂(骨張)」はネガティブな意味合いで使うことが多いようですが、数少ないポジティブな表現が「真骨頂」です。こちらは「その人本来の最高の姿」といった意味の言葉ですが、「骨頂」それ自体は「この上なく、最高の」を意味しているだけなのに、この単語を使った表現になると「骨」が含意する核や本質性のようなニュアンスにちゃんと(?)なるのは面白いなと思いました。
ギャンブルに限らず、依存症から抜け出すには、自力での回復を断念することが不可欠だと理解しています。他者を頼り、依存という疎外された状態から立ち直る機会が、ひとつでも多く生まれますように。(森康臣)切実なテーマである2つの推薦先に絞った後、「より寄付を有効に活用してくれそう」という理由でこの団体を選びました。(村山莉咲)
ギャンブルに依存する人のそばには、その人に精神的・経済的に依存されている人や、本来頼るべきでも頼れない子どもがいることを改めて感じます。自律とは依存先を複数持てることである、と考えたときに、「それ以外」の依存先の選択肢と、支援して・されていいじゃん、という価値観の後押しになればいいなと思います。(稲垣景子)
私自身もかつてそうでしたが、ギャンブルを抜け出したくても抜け出せない人はたくさん居ると思います。そうした人に支援の手を差し伸べる必要はない、という声が大きいのも事実ですが、立ち直りたいと思う人に適切な支援を与える場がきちんあることもまた重要だと思います。世間から理解が得にくい活動だからこそ、この団体を応援したくなりました。(坂本治也)
ギャンブルに染まってしまう人達を憎み責任を問うのではなく、そういう人を生んでしまう社会構造をみんなで変えていけるようにしたいとずっと思っています。(中村祥眼)
ギャンブル依存症問題を考える会を選びました。「病気であるという社会的認識が薄い」という推薦文にもあるとおり、共感を得ることが難しい活動だと思います。構造的な問題に対して制度による解決が簡単ではないということも、改めて考えるきっかけになりました。(鈴木瞳)
東西南北、さまざまな顔をしたギャンブル(ビジネス)の誘惑や罠が多面待ちしている今日この頃。そんな引っ掛けリーチにうっかりハマってしまったヒトたちを、自己責任論だけで断罪してしまうのはスジが悪そうです。長い人生、勝ったり負けたり、助けられたり助けたり ― そんな穏やかな場となることを期待して、ここは一発この団体を応援します。(小澤 啓一)
新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。ご興味のある方はぜひご参加ください。
運営
法人名 一般社団法人新しい贈与論
代表理事 桂大介
設立 2019年8月1日
ウェブサイト https://theory.gift
連絡先 info@theory.gift
メディアキット ダウンロード
「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。