NPO法人ぱっぷすへ寄付を行ないました — 新しい贈与論

NPO法人ぱっぷすへ寄付を行ないました

新しい贈与論は、NPO法人ぱっぷすに170万円の寄付を行ないました。

新しい贈与論では毎月会員の投票により宛先を決定する共同贈与を行なっています。今月は「記憶」をテーマに推薦を募集し、「NPO法人ぱっぷす」「渡邉英徳研究室」「アフリカ子どもの本プロジェクト」の3候補があがり、佐々木優、稲田遼太の推薦したNPO法人ぱっぷすが最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。

https://www.paps.jp

 性的搾取は、二つの方向から「記憶」を刻み込みます。
 第一に「個人的な記憶」です。強制わいせつ等はもちろん、AVへの望まない出演、性風俗への強制的な従事などは、トラウマとして当事者の記憶に刻み込まれ、長期にわたって苦しめる可能性があります。
 第二に「社会的な記憶」です。インターネット黎明期から、リベンジポルノはもちろんのこと、過去の出演AVやその出演歴、性風俗従事歴などが意図せず暴露され、デジタルタトゥーとしてインターネット空間において社会的に記憶され続ける事例は枚挙に遑がありません。
 このような問題意識の下、わたしたちは「性的搾取に終止符を打つ」をミッションとして掲げ、「デジタル性暴力やAV業界・性産業などで受けた困りごとの相談支援、本人の意に反して拡散した性的画像を削除する活動、アウトリーチ活動、アドボカシー活動、広報・啓発活動など」(https://www.paps.jp/より引用)に取り組む「NPO法人ぱっぷす」を推薦します。ぱっぷすは、従前の性的搾取はもとより、スマートフォンやインターネットといった情報関連技術の普及、発達に基づく性暴力被害の形態を「デジタル性暴力」と呼び、団体としての活動経験を基に、以下のように社会的問題を提起しています。


今やインターネット上の画像は、誰でも保存・再投稿が可能なため、これらの被害画像を完全に消し去ることが現実的に不可能とされ、終わりが見えない苦痛に絶望して希死念慮を訴える被害者も多くいます。ぱっぷすへの相談後、親族などの連絡で自死と判明した方も確認しており、中には自殺未遂を繰り返し、急に連絡が取れなくなった方もいます。デジタル性暴力が若年女性の自立にとって非常に大きな障害となっている事で、心理的・精神的・社会的なサポートが急務です。
(https://www.paps.jp/paps より引用)

AV業界・性産業における問題に限らず、交際相手からの性的な写真の要求に応じたことに起因してリベンジポルノ被害を受けるといった恋愛関係を背景とする「デジタル性暴力」事例も少なくありません。奇しくも2024年6月20日には、検察に押収されたリベンジポルノや児童ポルノ等の被害者が望まない性的姿態の電磁的記録の消去措置制度に関する法律が施行されたほか、AV出演の契約を無力化するルールを定めたいわゆるAV新法が成立するなど、昨今注目を集めている問題です。わたしたちは、「個人的な記憶」や「社会的な記憶」で苦しむ人たちのために粘り強く活動を続けてきた「ぱっぷす」に共感し、推薦します。

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • トラウマをよびさます個人及び社会の「記録を消す」こと、という観点は自分にはなかったものでした。デジタルな暴力という新たな脅威に専門家をふくめたチームで立ち向かっているNPO法人ぱっぷすのような活動は、行政が現実に追いつけていない分野において重要な役割を担っていると思います。迷いましたが、このグループで寄付するのであれば緊急性やニーズがある一方で認知度が低くなりがちな性犯罪・性被害への取り組みのほうがふさわしいのではないかと思い、この順番になりました。(中嶋愛)

  • デジタル性暴力という単語をはじめてしり、またその活動目的に共感したのでぱっぷすに投票させていただきました。私自身IT業界に身を置くものとして、こういった被害があることに目を向けていかなければならないなと思いました。(三上遼)

  • 個人的にデジタルタトゥー問題などが身近に感じていたタイミングでした。一般の人も、偶然やタイミングが悪かっただけで一生後悔し続けるようなリスクが含まれていると思います。そういう課題に取り組んでいるこの団体を支持します。(熊谷友幸)

  • リベンジポルノや性的画像の拡散といった、なかなか人に話しづらい内容の相談を無料で引き受けられているぱっぷすの活動への応援として、寄付先に選びました。AV・ 性産業の問題も、決して限られた人たちだけの問題ではなく、自分の身の周りに起こっても不思議のない問題であり、この寄付が少しでもそういった問題に苦しむ人たちの助けになればと思います。(朝野椋太)

  • 1,500万円足りません!とはっきり宣言されると、選ばずにはいられませんでした。活動報告を読むと、有給スタッフの増員や宿泊場所の増築などが記載されていました。NPOが大きくなることは喜ばしいこととは一概に言えませんが、やはりそれでも大きくなってほしい。困っている人を支えてほしいです。その一助になれば幸いと思い、一票投じます。(中村祥眼)

  • 推薦人だったこともあり、寄付先の選定にあたっては、いつもよりタイトルに引きづられました。記憶というテーマは、僕にとってはプライベートな印象を持つ言葉で、それが故に人間がより生々しく感じられるものを選びたくなりました。こどもができたこともあり、デジタルな性的搾取の問題について、加害者になりうる立場という従前のものに加え、被害者の父となる可能性が出てきました。それもあって、今回はぱっぷすに票を入れました。推薦文の作成にあたっては、言葉の難しさを感じました。繊細なテーマなので、気をつけないと意図とは違う読まれ方をします。そういった繊細なテーマで活動されていること、ありがたいなと感じます。(稲田遼太)

  • 自殺対策支援をしている団体の話を聞いた時に、死にたいと周囲に訴えている人より性被害者や性的マイノリティの悩みをネット検索している人の方が自殺リスクが高いという話を聞きました。それは被害の「記憶」を誰にも相談することができずに1人で抱えてしまうからとのこと。無慈悲な性被害の記憶から当事者の方が少しでも救われることを願います。(松井俊祐)

  • 鶴見俊輔さんが、過去の歴史を省みるときには『期待の次元』と『回顧の次元』があり、「この二つの次元を混同してはいけない」と仰っています。『回顧の次元』とは、歴史の筋がぜんぶ見えている地点に立って「あのときはどうだった」と回顧する姿勢です。発生から考えて、そのあとの歴史が全て見えている。事実がそこにあって先が見えているわけだから、「あれは正しかった、間違っていた」と、いわば好きなことをなんでも言えてしまうわけです。
    これに対して『期待の次元』とは、その場所に降りていって、「そのときに我々はそのことに何を期待したのか」を考える姿勢です。これは先がまったく見えていない。人間は必ずそのときその場所では「こうしよう、ああしよう」と色々考える生き物なので、そのときに何かを期待していたはずだと。この二つの次元を混同して、「人間はさまざまな選択をして、こんにちのような世界を作ってきた」と思い込みがちなんだ、と。
    しかし『期待の次元』に立てば、その先がどうなってゆくのか、ぜんぜんわからないわけですから、そこにはさまざまな道が目の前に用意されているでしょう。これが鶴見さんが仰る内容です。人物について語る際にも、歴史について語る際にも、自分がそこに降りていって、その場所に立って、その風景を眺めて、そしてこれからどうなるんだろうと考えたとき、そのときの判断、そのときに自分ならどうしただろうか、そう考えることが、とても大切だ、という意味です。
    勉強して知識を詰め込む作業とはまったく異なり、そのときのいわば自分の生存を賭けて、「これからどうしようか」と歴史と対峙する姿勢といえると思います。そのためにはまず、歴史に対峙するときは『回顧の次元』と『期待の次元』を切り分けて考えねばならないと。
    わたしは記憶と記録の違いは、この『期待の次元』と『回顧の次元』の違いであろうと思います。『回顧の次元』から「あのときはああだった」と単純に振り返る姿勢に抗い、そのときのその場で濡れしぶく自分の判断を呼び覚ます力が、記憶には備わっていると思うからです。
    今回の三つの提案は、いずれもその『期待の次元』に立つ姿勢から成されていると感じました。
    そのなかでも私は、より『期待の次元』を、この世界で没却しない努力に資する順と考えました。
    第一希望に推薦する理由としては、性被害とは『回顧の次元』ではなく『期待の次元』から考える人が増えることで、初めて被害者や加害者と対峙出来る、生身の記憶だと考えるからです。(前田浩史)

  • 忘れられたい記憶と、とどめておきたい記憶、記憶と記録の乖離など、さまざまなことを考える推薦でした。たとえどんな記憶であっても、そのことを起点に未来をつくっていこうする人々の意思に一番心を動かされました。(吉見新)

  • 社会がもっと焦点を当てて向き合うべき課題だと感じたため。(高城晃一)

  • ぱっぷすのホームページの課題感を読み、改めて、自分のモノの見方が一面的であることに気づきました。なかなか目を向けられていない性的搾取に地道に取り組まれていること、応援したいです。(阿曽祐子)

  • 大変なやみましたが、ぱっぷすさんを第一候補としました。この事業費の規模で、被害を受けた方の直接支援からアドボカシーまで取り組んでいらっしゃるのは本当にすごいと思います。痴漢された記憶はいくら前のものでも全く消えていないな、と自らを振り返ったことからも、一票を投じたいと思いました。(立花香澄)

  • 性的搾取という言葉に嫌悪感を感じたため

  • 悩みましたが、今回は子を持つ親としての危機感に従って選びたいと思います。(中村雅之)

  • 「忘れられる」権利もある世の中だといいなと思います。(横山詩歩)

  • 「デジタル性暴力」という考え方を始めて知りました。自己責任と自助の極地で起きるイシューに介入している取組に感銘を受けました。人権が守られて欲しいです。(河合将樹)

  • 性的に意図せず収奪し、搾取されることが、本来であればひとつの喜び、大切なこと、もっと自由に楽しむこともありえるはずの性的なことすべてに暗く深い影を落としていると感じます。こういった負の側面が解消されていくことが、人にとって大切なことであり喜びであるという側面に光を当てることに繋がるのではと感じ、この団体に票を投じます。(志賀響子)

  • 各団体が支援する対象のうち、どの対象者を支援したいかの順番で選択しました。その点において、もっとも切実に困っているであろう方を支援するぱっぷすが第一希望となります。(田中宏幸)

  • 記憶は、やはり、朝帰りに布団に滑り込む時のように、公園で子供が遊ぶのを眺めている時のように、金曜日の深夜に誰もいないバスに乗り込む時のように、安らかなものであって欲しいから。(NM)

  • デジタルタトゥーは社会に登場したばかりの問題で、まだ十分な法的・技術的な対策が整っていない印象です。それに対して人海戦術的に取り組むしかない状況で、重要な立ち位置のNPOだと感じました。(秋山福生)

  • 当事者にとって深刻な問題であり、今後未成年の被害も増えていくのではないかと懸念しているため。(閏間絵里加)

  • 忌まわしい記憶を消す、ということは、誰にとっても困難な営みだと思います。性的搾取という非常に重い問題に立ち向かわれているぱっぷすさんの活動に敬意を表し、第1希望として投票させていただきました。

  • やっぱり記憶を記憶としてそのまま扱うことは私にはできない、そういう時の記憶ってデータでありアーカイブでありUSBスティックだ。私は、記憶というからにはどうしても自分の体験と紐付けて考えたいんだなと思いました。 というわけで、個人的に体験と紐づけて共感できる順に投票します。(綿貫美紀)

  • 推薦人です。今月のテーマ「記憶」から最もストレートに導かれる問題意識が推薦文の内容でした。(佐々木優)

  • 相談のみならず、物理的コストのかかる宿泊支援、同行支援等包括的な支援を行っており、更に海外ネットワーク構築も視野にいれた活動を支持します。(守屋まゆみ)

新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。ご興味のある方はぜひご参加ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。