NPO法人ろう教育を考える全国協議会へ寄付を行ないました

共同贈与コミュニティ「新しい贈与論」は、NPO法人ろう教育を考える全国協議会に対し69万円の寄付を行ないました。

新しい贈与論では毎月会員の投票により決定される寄付である共同贈与を行なっています。2022年5月は「音」をテーマに推薦を募集し、「NPO法人ろう教育を考える全国協議会」「特定非営利活動法人テラ・ルネッサンス」「一般社団法人森と未来」の3候補があがり、前原祐作さん、三上遼さんの推薦したNPO法人ろう教育を考える全国協議会が最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。

今回我々は「音」に関わる団体として「NPO法人ろう教育を考える全国協議会(以下、本協議会)」を推薦します。

本協議会はろう、難聴教育に関する討論集会や書籍物販売、学校支援、普及啓発等をしている団体です。

「音」と「ろうあ」という事で若干ストレート過ぎるかもしれないとも思ったのですが、今回色々と寄付先を調べていく中でこちらの団体を推薦したいと強く思いました。

本協議会の活動内容の一例として、「ろう学校の専門性向上のために」という提言を紹介させてください。

本提言ではろう教育の専門性の必要性が説かれ、現在の機械的な異動ではその専門性が損なわれてしまうという事の問題点が指摘されています。ここで私が驚いたのは、「なぜろう教育に専門性が必要なのか」という事に関連するのですが、「日本語と手話は別言語である」という点です。

言われてみればその通りなのですが、手話は我々が普段使用している日本語とは別の言語ですので、ろう者の母国語はあくまで手話であり、日本語は彼らにとっては第二言語という事になります。ですから、それを教える教育者の側にも「手話(という別言語)に精通している」ことと「日本語を教える事に精通している」ことが求められるとの事でした。

このようにろう教育をとりまく環境にはまだまだ問題があり、自分も今回初めて知ったことがたくさんありました。ろう教育には「9歳の壁」という言葉もあり、第二言語にあたる日本語の学習が充分でなかったため、抽象的思考が十分にできない、あるいは文章能力を含めてコミュニケーションのレベルが小学3、4年程度で停滞してしまうような方も多くいらっしゃるそうです。そしてこれが原因仕事で昇進できない等のハンディキャップを抱えている。

先天的なろう、難聴とは別に、後天的な教育の問題によって読み書き等に不自由を抱えてしまうことは、社会によって解決できる課題であると思います。本協議会の活動がこの様な課題を解決する事を祈って推薦させていただきます。

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • たまたま、今、聴覚障害に関する本を読んでいました。ろう教育、手話教育の必要性も出てきました。あらためて、NPO法人ろう教育を考える全国協議会という団体があり、こういった活動を行っているのを初めて知りました。やはり教育はとても大切です。障害があっても適切な教育を受けられるような取り組みは本当に大事だと思いますので、NPO法人ろう教育を考える全国協議会に投票しました。(山田泰久)

  • 子供の教育ほど重要な投資はないと考えていますが、それはろう教育も例外ではないなと思いました。そして、聞こえない・聞こえにくい子どもが、教育によって得るものの1つが「ある種の高度な言語スキル」だと理解すると、それは専門学校であり、教え手に専門性が必要なことは明らかだなと感じました。(中村雅之)

  • ろう教育に関して、ろう学校や聴覚障害者団体の存在は前から知っていましたが、より良いろう教育のために出版や集会を行うこのような団体があるということは今回初めて知りました。HPを拝見すると、コロナ禍で全国集会が中止となり、これまでのような活動ができていない様子が見て取れます。歴史のある団体の活動継続の助けになればと、今回はこちらの団体を選ばせて頂きました。(朝野椋太)

  • 調べてみたところ日本には聴覚障害者が約30万人いるとのこと。彼らが社会から取り残されないよう、このようなNPOを支援していく必要がある。(太田睦)

  • 手話言語条例が各地の自治体で制定されつつあります。手話の認知度はかつてに比べれば深まっていると思われますが、肝心の中身はあまり知られていないのが実情でしょう。少子化の時代は、子供一人一人にかけられる資本を増やせるはずの時代でもある、と聞いたことがあります。(経産省の若手官僚のプロジェクトで取り上げられていた気がします)障害児を人生の長きにわたって不利な状態におとしめるきっかけが、社会の側の不備にあるとするなら、それはあまりにも勿体無い。教育の充実は全てに優先すると思います。(福本大吾)

  • NPO法人ろう教育を考える全国協議会に投票します。好きな写真家に齋藤陽道さんというろうの方がいるのですが、その方が「働くろう者を訪ねて」という連載をしています。

    https://co-coco.jp/series/hataraku/harumichi_saito/

    これが面白く、それをきっかけにろうについて知りました。一言にろうと言っても、症状の程度も違えば、教育を受ける外的要因によって各人様々な状況があることがわかります。補聴器をつけて話す方や、「手話ネイティブ」の方。手話一つとっても、象形文字のような表現もあれば、表意文字のような表現もあり、更に国ごとに違う、、、。そんな中で、当団体のような活動に意味があると思いまして、こちらに投票いたします。(河原塚有希彦)

  • 日本語と手話は別言語で、専門的な教育が必要であるということは、日本語中心で考えていた自分は気づかなかったことでした。ろう教育を考える全国協議会の取り組みを応援したいと思いました。(大政勇作)

  • 「音」というテーマに対しストレートであると同時に、私を含めまだまだ認識が足りていない分野なのだということにハッとさせられました。「9歳の壁」や抽象的思考に直結することもお恥ずかしながらこの寄合で初めて知りました。今回みなさまのお話を聞き、ろうの深刻さに対して解像度が上がったことは大きな学びでした。少しでも「NPO法人ろう教育を考える全国協議会」さんの活動を通じ、私の今日のような学びが増えて欲しいということも選ばせていただいた大きな理由です。(横山詩歩)

  • 今回挙げられた候補について、問題が問題として認知されにくいと思ったものから、寄付先の希望順序を決定しました。推薦者の方が紹介いただいた「ろう教育の専門性の必要性」について、なかなか触れる機会が個人的にも少なかったこともあり、新しい贈与論を通じてつながりたいと思い希望いたしました。(古川哲)

  • 5感の中で、ふだんあまり重視していない聴覚がない世界は、実は目が見えないよりも辛いらしい。とどこかの本でヘレンケラーが語っているのを知り、関心がむいていたところでした。深刻さでいうと、命にかかわる地雷を取り扱うテラ・ルネッサンスの方が深刻かもしれませんが、すでに不自由さを抱えている耳の聞こえない人たちの、見えづらいもう一つの不自由さにより重要さを感じたので、第一希望をろう教育とします。(市村彩)

  • 音というテーマからストレートに心に響いたのはこの団体でした。ろう教育の抱える課題をこれまで知らずに来ました。教育の専門性がないがしろにされがちなのは何故なんでしょう。という憤りと共に。(本間盛行)

 新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。現在は新規会員も募集中ですので、ご興味ある方はトップページよりご確認ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。