NPO法人POSSEへ寄付を行ないました

共同贈与コミュニティ「新しい贈与論」は、NPO法人POSSEに対し73.5万円の寄付を行ないました。

新しい贈与論では毎月会員の投票により決定される寄付である共同贈与を行なっています。2022年6月は「点」をテーマに推薦を募集し、「NPO法人体験型安全教育支援機構」「一般社団法人暮らしランプ」「NPO法人POSSE」の3候補があがり、鈴木亜香里さん、山田泰久さんの推薦したNPO法人POSSEが最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。

POSSEでは、相談へのアドバイス、権利行使のサポートに加え、メディアでの発信などをつうじて、労働・貧困の現場から社会に影響を与えていく活動を行っています。特に、若者の「働くこと」に関する様々な問題に取り組むNPO法人です。

https://www.npoposse.jp/

問題や課題、秀逸、良い・悪い、美しい・汚れ、利益。
これら、状態を表す言葉に「点」をつけると、問題点、課題点、秀逸点、良い点、悪い点、美点、汚点、利点になる。
「点」をつけることで、抽象的だったものが一気に解像度が上がり、具体的なものとなる。

NPOの活動はまさにこの「点」をつけることである。社会問題に「点」をつけ、具体的な問題点を発見することである。問題がより具体的なものとなり、問題を解決するための糸口が見つかる。課題解決につながる「点」をつけることがソーシャル・イノベーションの始まりかもしれない。

今回推薦するNPO法人POSSEは、労働問題という社会問題の中でも、若者の労働にスポットをあてて、問題点を可視化して、活動を行っている。

労働問題は、明治の近代化以降、労働者が誕生するとともに発生した、長年続いている社会問題である。明治30年代に労働運動家や社会主義者の取り組みにより、労働組合の元となる組織が結成され、当事者である労働者自身がこの問題に取り組んできた。しかしながら、労働争議は常に政府や警察から弾圧されてきた歴史がある。戦後、昭和24年に労働組合法が施行されたことにより、労働組合が結成され、労働問題の解決に取り組んできた。

一方で、労働組合にアクセスが出来ない労働者もいる。ブラック企業や非正規雇用などの若い人たちの労働者だ。制度の枠からはみ出してしまっている、これまでに注目されていないなど、労働組合だけでは零れ落ちてしまうような若者の労働問題にいち早く着手したのが、POSSEである。

そもそも、労働組合ではなく、NPO法人が労働問題そのものに取り組むことは珍しい。ホームレス支援や貧困問題、青少年の引きこもりなどで就労支援に取り組んでいる団体は多いが、労働問題をメインテーマに取り組んでいるPOSSEは、ある意味、一点ものの存在である。

明治から続き、時代とともに変わる労働問題について、若者の立場で問題点をあぶりだし、活動を行っている。ブラック企業など、労働問題で悩んでいる若者は以前から存在している。それぞれの若者が抱えている悩みや苦労は、えてして個人の問題だと捉えられてしまう。しかし、POSSEは、点在した個々の問題をつなぎあわせ、可視化することで、個人の問題ではなく、社会の問題として捉え直し、活動に取り組むとともに周知啓発も行っている。それは、点を面にするというよりは、点描画のように個々の問題を集め並び替えることで、労働問題を問題点として表出させているわけである。

ブラック企業、派遣切り、非正規雇用、残業未払、ハラスメントなど、労働問題そのものが重要な社会問題として認識されている。こういった問題に対して、無料の労働・生活相談や青少年の労働法教育などに取り組んでいる。相談へのアドバイス、権利行使のサポートに加え、メディアでの発信などをつうじて、労働・貧困の現場から社会に影響を与えていく活動を行っている。その他に、労働問題に関する様々な調査研究や実態調査などを行い、問題の可視化を行うとともに、メディアへの働きかけや定期雑誌の発行など、周知啓発の取り組みも積極的である。取り組んでいる社会問題だけではなく、NPO法人としての手法にも注目して、寄付先として推薦したい。

最後に、NPO法人POSSEにたどり着いた経緯を紹介したい。世間からあまり注目されていない社会問題に「焦点を当てたい」と考え、「焦点を当てる NPO」で検索した結果、こちらの記事がヒットした。

「大人食堂」はなぜ必要か?「大人」も支援や居場所を求めている

https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20190519-00126400

全国各地で行われている子ども食堂。それ自体は素晴らしい活動である。が、共感を集めやすい「子どもの貧困」に焦点を当てることで、大人の貧困が見えなくなってしまう。それは、「子どもの貧困は可哀そうだが、大人の貧困は自己責任だ」というメッセージを、無意識に発してしまっている。

POSSEは、「大人食堂」を開くことで、働いても食うに困る大人の存在に焦点を当てた。社会の中で点のように孤立していた大人たちが相談できる場を作った。残念ながら、新型コロナウィルスの流行のため、大人食堂は一時休止しているが、様々な取り組みを通じて目立ちにくい労働問題に焦点を当てるNPO法人POSSEを推薦する。

なお、世の中によいことを行なっているNPOでも、度々、労働問題になることがある(残業代の不払いやパワハラなど)。その中で、労働問題を切り口に活動を行っているPOSSEの存在はNPOにとっても労働問題が別世界のものではないということを伝える機会となっている。

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • POSSEは代表の今野さんの記事や寄稿が多数あり、それらを読むことでとても共感を持ちました。POSSE単体に対してというよりも、そういう視座で活動を行なっている代表やスタッフの一つの形の表れとしての「POSSE」という意味で選択しました。
    POSSEの活動は社会課題の解決であり、また、その社会課題は何か1つを達成すれば終わる様なものではなく、課題解決のための要件が複雑で同時平行に解決させないと根治できない、まさに「社会の課題」だと改めて思いました。就労環境が悪くなる理由は大別すると2つあるかと思っています。1つは理念でどういう理念でビジネスを行なっているか、2つめはお金かなと思っています。つまり、言い方は悪いですが視座の低い理念にもとづいて、支出をできるだけ圧縮しようとすると、必然的にブラックな傾向になるのではないかと思います。社会への還元や、共創し、学び合う、社会を1歩でもよくしよういう理念や精神が少しでもあれば、人件費もできる限りで最大化し、人材を大切にし、働きやすい環境に転じていくと考えます。ただ、これは理想論であり、そういう綺麗事で世の中は回っていないのは重々承知しています。ただ、そういう課題に向き合うためのエネルギーの大きさ、大変さは想像できます。贈与という形でしか私は参加できないですが、この様な形でも社会課題解決に参加したいと感じました。(福原寛重)

  • 元若者や若者の労働環境・貧困に課題を感じているからです。これは会社個別の問題というよりも社会問題だと考えています。書いてあるとおり、NPO法人がこの社会課題に取り組むケースはとてもめずらしいことです。ぜひ応援したいです。(白川みちる)

  • POSSEは、外国人労働者の相談窓口を持っていることに、評価をいたしました。暮らしランプは、多様性が重要ないま、実際に現場で格闘されていることに敬意を表します。体験型安全教育支援機構は、外国人児童へのケアまで行っておられるのが素晴らしいです。どうしてこんな安全に気をつけなければならない社会になったのか、振り返り、啓発する活動にも力を入れていただけるなら、と思います。(藤岡達也)

  • 労使問題って綺麗事じゃないな、というのが労働問題の労使双方の意見を身近で聞く機会があって感じるところです。一般論としては労働側の立場が弱いとされますが、歴史ある労働組合なんかを見ると、そんなことないなと、、。(むかしは労働問題を突き詰めてプロレタリア革命主義に至るなどした影響だと思うのですが)
    メーカー勤務時代は大きな労働組合がありましたが、一労働者としては自分を守ってくれるのが誰かよくわからなかったです。入社時に労働組合の指定金融機関で口座を開いて給与天引きで組合費を払ったり、仕事に関係ない組合夏祭りに駆り出されたり、その上日々の残業時間は長くて、、。否定的というよりはピンとこなかったんですよね。
    POSSEさんのように現代的に労使問題の解決を図る取り組みはいいなと思った次第です。(河原塚有希彦)

  • 若者、成人の労働問題という、個人の意志や責任の結果として扱われ、共感されづらい課題に対して、一人ひとり事情が異なる労働環境の問題をすくい、問題を提起し、行政とは違う立場で支援を行うPOSSEの活動が、より一人ひとりが生きやすい社会への実現に繋がればという想いを込め投票しました。(古川哲)

  • 若者のうちに得た就労機会は、この先の労働する人生に大きな影響がある。若者の労働問題の解決を支援することは、即ちその先の長い(若くなくなってからの)労働人生における問題の解決にも及ぶと考え、POSSEを選びます。(志賀響子)

  • 自分ごとである課題を扱っているNPO法人POSSEを一番に選びました。「焦点を当てる NPO」で検索したというエピソードもユニークだと思いました。この場合、タイトルに「焦点を当てる」を用いたライターさんの勝利ということですね。(市村彩)

  • 子どもの貧困はフォーカスが当たりやすいというのは、まさにそうで、しかしながら、その子どもの貧困を生み出しているのは、大人の貧困が源流にあることは忘れられがちです。特に、今回の投票で、最後の決め手になったのは、普段はあまり見ないのですが、事業報告書を拝見したところ、近年、かなりサポートを必要としている方がいるはずですが、経常収益が約4000万円だったことは、衝撃的でした。新しい贈与論の寄付が、お金はもちろん、それ以上の何か、この事業をドライブするものにつながればいいなという願いも込めました。(東詩歩)

  • 労働環境や低賃金に悩む人が数多くいる中、なかなか相談先は見つからない。コロナの影響もあり、こういった若者が増えている印象がある。POSSEの活動が継続され、一人でも多くの若者の心が楽になり、前向きに生きれる社会になれば良いと思い投票します。(高城晃一)

  • 3つの候補とも、思いのこもった推薦文で本当に選ぶのが難しいですね。。特に「子供の貧困だけでない大人の貧困にも」という点が最後心に残ったので選びました!(藤原麻耶)

  • POSSEは実が伴う活動です。リサーチも充実しています。声を出せない人のために闘ってくれます。(阿曽祐子)

  • 労働って何なのだろうと。昭和に労働を開始した自分は資本家⇄労働者というフレームの中で考えることができたものが、今、何を軸に「働くこと」を考えればいいのか。相対的に長期間働く若い人達の、現実の課題に向き合うことで新たな労働論の誕生することを期待します。(本間盛行)

 新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。現在は新規会員も募集中ですので、ご興味ある方はトップページよりご確認ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。