NPO法人数理の翼へ寄付を行ないました

共同贈与コミュニティ「新しい贈与論」は、NPO法人数理の翼に対し77万円の寄付を行ないました。

新しい贈与論では毎月会員の投票により決定される寄付である共同贈与を行なっています。2021年11月は「幽玄」をテーマに推薦を募集し、公益財団法人世界遺産賀茂御祖神社境内糺の森保存会、一般財団法人ダイアローグジャパンソサエティ、NPO法人数理の翼の3候補があがり、荒川陸、宮本涼輔の推薦したNPO法人数理の翼が最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。

テーマ「幽玄」が表すもの --- 定量化できない、効果的利他主義の対象として考えることの難しいもの --- の一つは純粋な興味・好奇心だと思います。「みんながやっているから、将来役立つから」というような画一的な理由ではなく、なんでそれをやっているのか説明が難しい、好きだからとしか言えないようなこと、そういった事に自由に向き合える時間と環境が、個人の洗練された感性に繋がり、集合として「幽玄」を構築するのではないでしょうか。

NPO法人数理の翼が提供する「数理の翼夏季セミナー」は、自然科学という共通の興味をもった高校生たちがとことんその世界を探検することができる合宿形式のセミナーです。知識を学ぶのではなく、最先端の科学の考え・未解決問題を第一線の研究者から学ぶことで、参加者各々が持つ自然科学への好奇心を大きく追究することができます。高校生は、ともすれば受験勉強のような決められた土俵で、カリキュラムを機械的にやることが求められてしまいます。そういった時期に、そのような枠組みとは離れて、「自分が知りたいことを突き詰める」5日間はとても貴重な環境です。

推薦人の一人は実際、過去の参加者でした。そこで経験した、朝から晩まで自然科学をとことん考えるという体験は他では得難いものだったと思います。まず、集合場所から宿に向かうバスの中から、初対面の高校生同士、大学生のメンターが混ざり合って、量子物理学や数学基礎論などの議論があちこちで自然発生していて面食らいました。同じ部屋で布団が隣だった彼は、国際化学オリンピックで二年連続メダルを取っていて、化学が大好きで、就寝時間を超えても熱化学方程式の理論と、彼が今考えているテーマについて教えてくれました。日中は、現在ノーベル賞候補と言われる光格子時計の研究者である香取教授を初めとした先生方が、ほとんど手加減なしでその理論を説明してくださりました。到底全部は理解できませんでしたが、人類の知の最先端に触れた気がして、大きな刺激を受けました。自分は、この体験がきっかけで、研究者になって自分の好奇心を突き詰めたいと思い、今は博士課程で研究を行っています。布団が隣だった彼も同じく博士課程で研究をしていて、違う分野の同志として今でも貴重な繋がりです。

数学、化学、物理、生物など幅広い分野で強い興味を持つ高校生が、ほぼ無料で参加することができますが、NPO法人として金銭的な制約から、倍率の高い選抜を行わなくてはいけないのが現状です。一人でも多くの高校生が自由にその興味・好奇心を追究できる場 --- 「幽玄」の感性を育むことのできる貴重な場 --- を提供したいと考えて、推薦します。

以下公式ページの引用です。

『数理の翼夏季セミナー』は、数理科学に強い情熱と優れた資質を持つ若者に学年や地域の壁を越えた交流の機会を提供し、数理科学に対する意欲を育む契機を作ることを目的とし、毎年1回、全国から主に高校生の参加者を招待して、また科学の第一線で活躍する研究者を講師に迎えて開催しています。

豊かな日本の発展を継続させるために必要な高度な教育の重要性を鑑み、 フィールズ賞受賞者の広中平祐博士により創始された「数理の翼夏季セミナー」の歴史は四半世紀を超え、 セミナーの参加者自身によって当NPO法人は設立されました。 このセミナーでは、知識を習得するということよりも、最先端の科学にかかわる第一線の研究者から学ぶことにより、 自然科学に対する視野を大きく広げることを目的としております。 また、広範な専門分野で活躍する研究者や教育者となった者たちが集う同窓会(湧源クラブ)では、分野を越えた交流が進んでいます。 また、福岡でも数理の翼セミナーが開催されるようになり、東京ではワークショップなども盛んです。

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • なんかすごいですね。最先端の科学にかかわる第一線の研究者から学ぶってさらっと書かれてますが、徹底的にそうなのでびっくりしました笑 単純に面白そうですし、ここまで替えの効かなそうな貴重な機会はこれからもずっと続いていてほしいです。(中島真)

  • 幽玄に向かうイメージに一番近く活動を選択しました。若年層の教育にかかる内容であること、活動実績、組織の事業報告がしっかりしていそうだったのも評価理由に含めています(前田昌太朗)

  • 今回は本当に悩みましたが、「学生を応援する」ということは、いま最も重要でありながら足りていない領域の一つだと思い、数理の翼を希望します。(上西雄太)

  • 学生のころ数学者を目指していたこともあり、数理の翼に贈与することが、過去の自分に「そういうあり方でもいいんだよ」とエールを贈るような、そういうかなり自分本位の気持ちで一位にいたしました。若い人が無心に自分の好きなことに没頭できる社会でありますように。そうそう数学の研究ってほんとうに幽玄の境地に触れる瞬間があるんです!(本間盛行)

  • 今回のテーマ「幽玄」は、投票者である私にとっても難しい問いでした。何となく選択しております。たまには偶有性に委ねて投票することも、再分配による富の均一化に寄与するのではないか、とも考えたりしましたが、言い訳の要素の方が多い気がします。(武井浩三)

  • 第一線で活躍する人から直接教わり、興味を同じくする同年代の仲間との出会いは、羨ましく魅力的な機会です。数理の翼さんの、刺激に満ちた機会の創出を応援したいです。(大政勇作)

  • 今回も全く違う方向から推薦されたもので、比較判断が難しいですね。それぞれの団体や活動に役割や意義を感じました。また、推薦人のみなさんが幽玄と団体をどう結びつけるのかもとても興味深いものでした。その上で、今回は推薦文の妙、面白さから「数理の翼」を選びました。なんだか見てはいけない世界を見てしまった気がします(笑)。数理の世界はすごいですね!そんな世界を覗ける高校生を増やす一助になると思い、第1位にしました。(山田泰久)

  • 私は大阪出身です。大阪は江戸時代には東洋のベネチアと言われたそうですが、今はほぼ見る影はないです。守りたい人も大勢居たとおもいますが、社会圧として結果的に捨てたと言えるとおもいます。本当は残しつつ発展する事ができたかもしれません。そういう行動変容を起こすにも、人が育たないとと思っています。今回は、守ってきた過去からの歴史を守るか、種を植えないと始まらないので、未来を育むかとい視点で決めました。(福原寛重)

  • 数理の翼の体験談を拝見し、その突き抜けた体験に興奮と羨ましさを覚えました。贈与論の寄付先のテーマとしては、家族に恵まれなかったり、障害をお持ちだったりする人への支援がたびたび話題になります。それは社会の「普通」からはみ出ていて「普通」の制度だけではそのギャップがあるから、NPOがそれを埋めているんだと思います。翻って考えると、優秀すぎて「普通」をはみ出た子供にもまた、ギャップを埋める存在が必要とされているのかなと思いました。(河原塚有希彦)

  • 好奇心が可視化しづらいことであるとともに、世の中の全ての課題に向き合うために知識のもとになる好奇心はとても重要なことでもあると思うので選びました。(宮本涼輔)

  • 理数は、わたし個人が苦手で無知識な分野なので、憧れがあります。笑 高校大学生が、第一線で活躍されている研究者の方から直接学べる機会は、とても貴重で得難い体験なのではと思います。最近の教育は、将来の役に立つ、立たないといったわかりやすさで評価されがちだと感じるので、こういった本質的な知を深めたり拡げたりする活動は応援したいです。(姜花瑛)

  • 「幽玄 意味」で調べると、「奥深くて、はかり知れないこと。趣が深く味わいが尽きないこと」と書かれていました。「知の幽玄」という意味で、数理の翼の活動はその熱量と可能性のはかり知れなさが想像でき、とても魅力的に感じました。子供でも大人でも、分野問わずこのような体験が自由にできる社会であってほしい、あり続けてほしい、という願いもこめて第一希望とします。(藤原麻耶)

  • いずれも優劣つけがたい、とても興味深い推薦先でしたが、、自分ではゼッタイに出会うことのできなかった団体、NPO法人数理の翼を上げてくださった推薦者の選球眼に敬意を表し、ここを第一希望とします。私や私の家族にはご縁がなさそうな団体ですが、未来を創る意義ある活動だと思います。(宮本聡)

  • 今回の投票はとても迷いました。恥ずかしながら、「幽玄」という言葉をこれまで使ったことも考えたこともなかったからです。推薦先についても全団体全く異なる活動をしており、改めて「自分は何を持って寄付したいと感じるのか」について考えることができました。(泰松美衣子)

  • 私は、人が大きく成長するためには、「才能」「努力」「環境」の3つの要素が重要だと思っています。「努力」は自分自身の意思で制御できる要素ではありますが、「環境」「才能」については、自分自身の力だけでは制御できない要素だと考えています。「数理科学」という好きなことに対して挑戦している時点で私は「才能」だと感じますし、そんな才能を持った学生たちに、教育と出会いという「環境」を用意することは非常に有意義であり、大きな未来への繋がりを感じました。応援しています。(疋田裕二)

  • 好奇心の対象をとことん考えることの楽しさ、喜びは、自分自身が大学院に進んだ理由でもあり、高校生に最先端の研究を学ぶ機会を贈る活動に共感しました。役立つか否か、意味があるか否かを問われがちな時代において、こういった機会は尊く、未来を拓く活動だと思います。また、推薦人の方自身の過去の経験談もとても素敵で、こういう経験をできる高校生が増えればいいなと思い、票を投じたいと思います。(広井健一郎)

  • 自分だったら一体なにを推薦するだろうという難しすぎるテーマに対して、三者三様の推薦先に今月も唸りました。投票理由はほとんど直感です。推薦文にある「数理の翼」のプログラムはとても魅力的で、こうした好奇心に突き動かされる場がたくさんある、そんな世界を作りたいなと共感しました。(森康臣)

  • 今回はどれも一般に開かれた活動だったため、自分が行ってみたいか、体験してみたいかという感覚的なところで考えてみました。「量子物理学や数学基礎論などの議論があちこちで自然発生して」いるバスに自分も乗ってみたいと思い選びました。(嶋田康平)

  • 第一希望を「数理の翼」にした理由は、純粋に、自然科学に興味のある高校生が集まってとことんその世界に没頭できるなんて素晴らしい!と思ったからです。日本の高校生活は、大学への進路や専攻などを考えるうえで大事な時期ではありますが、学校のカリキュラムや受験勉強に時間を占領されて、そもそも何を自分は学びたいのかに触れられる機会が狭いなと感じていました。
    きっとこの体験をした生徒たちには、第一線の研究者から得られる刺激や、同世代や先輩とかわした熱い議論がその先の未来に大きな影響になるだろうと推薦文を読みながら思いました。こういった機会がより多くの生徒に開かれることを願って、またこのような試みが知られることで自然科学以外のテーマでも機会が増え、高校生世代が自分の興味関心や学ぶ楽しさを知るチャンスが増えることも願って、1票を投じます。(浅井美絵)

  • 理科嫌いだった私ですが、このプログラムはそそられました。興味のあることにとことん浸かる時間はとびきり楽しいでしょうね。応援します!(宮崎あおな)

  • 数理の翼は、以前合宿に参加したOBOGが運営スタッフとして入るのですね。恩送りができているのがいいなと思いました。合宿場所までの交通費も補助があるようで、経済的に恵まれない子供でも参加のチャンスがあるのが良いなと思いました。(鈴木亜香里)

  • これはという芽を見いだして育む地道な活動に見受けました。対象者を絞っての濃縮体験が、見えない闘いの道を行く科学者の礎になるように思いました。(阿曽祐子)

 新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。現在は新規会員も募集中ですので、ご興味ある方はトップページよりご確認ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。