共同贈与コミュニティ新しい贈与論は、認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワークに67万円の寄付を行ないました。
新しい贈与論では毎月会員の投票により宛先を決定する共同贈与を行なっています。2023年1月は「遠い」をテーマに推薦を募集し、「独立行政法人国立文化財機構」「認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク」「NPO法人全国自死遺族総合支援センター」の3候補があがり、古川哲さん、河原塚有希彦さんの推薦した認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワークが最多票を得ました。
推薦文は以下の通りです。
この法人は税理士・公認会計士といった専門家が「自発的に様々な社会的課題の解決に取り組むNPOの活動が、人々から共感され、活発になる社会を目指」して活動しています。
(https://npoatpro.org/about.html)
ここ最近SNSを中心に、非営利法人の会計に関する話題がニュース性を持って流れています。
話題となる背景として政治的側面なども言及されていますが、根底にあるのは「①非営利法人への不信感」「②公費を使うことに対する市民感情」というのがあると私たちは考えました。
今回の贈与テーマ「遠い」に沿って考えると、①については、非営利法人の存在自体が身近ではなく「遠い」ため、知らぬものへの忌避感情があり、②については、公費の性質として国民から税金が徴税されてから使われるまでが直接的ではなく「遠い」ため、会計監査や数字上で清廉さを示すことでしか公費を伴う活動に関する説明責任を果たせない点に課題があると考えました。
私(推薦人の一人)も公的機関で働く一人の人間として高い倫理観をもって、経費執行に当たらねばならない責任感を重く受け止めて業務に取り組んでいます。現場で働いている人間の実感として、会計の透明性の観点において、公的資金の中には使途が厳重に制限されている予算も多く、説明責任を果たすため、本来、直接期待されている業務以外の事務手続きの負担も大きいです。
NPO法人の活動に目を向けてみますと、公費の使用によらず上述の公的機関同様の説明責任を求められるため本質業務を圧迫してしまうことすらあるようです。
例えば、「NPO法人は、年に1回(毎事業年度はじめの3ヶ月以内)、事業報告書などを作成して行政庁に提出しなければなりません。また、それらの書類は事務所に常に備え付ける必要があり、閲覧を求められた場合には応じなければならないのです。このため、NPO法人の事務は、他の任意団体や法人に比べて煩雑になりやすく、理事等の負担は大きくなりがち」と言われています(https://blog.canpan.info/npotokyo/ より引用)。
以上からNPO法人では
・市民からの信頼を獲得すること
・本質業務に集中しながら、きちんと会計業務を行う実務力の向上
の両方が必要になるといえます。こうしたNPO法人の課題に対してNPO@PROでは各種サポートを提供しています。信頼獲得に対しては、共通の会計ルールを設計することで市民にわかりやすい会計を導入する活動を行っており、会計実務力の向上については会計の専門家がNPOの活動に則した教育啓蒙活動をされています:
信頼を得るための「NPO法人会計基準」の策定:
「NPO法制定以来、NPO法人には会計基準がなく、各団体が作成する計算書類はバラバラで、比較検討もできませんでした。NPOが情報公開を行って周囲から賛同を得るためには共通の会計ルールが不可欠であるとして、市民にとってわかりやすいこと、信頼性の向上に資することを基本的理念」としたガイドラインを策定されています。
会計実務力を高めるための 書籍出版・啓蒙活動:
「NPO法人における日常の会計業務をより簡便に行い、また、NPO法人会計基準に準拠した会計書類の作成」のための「NPO法人向け会計ソフトの紹介」を行っているほか、「NPO法人実務ハンドブック」の出版や、専門家による無料電話相談の窓口のなどを設置されています。
このような活動を通じ、NPO法人がよりその業務に集中しながら社会から信用されることで、交付金や助成金、寄付を含む外部からの支援が獲得しやすくなり、よりNPO法人の活動が社会に広がっていくことが期待されます。
今回の寄付を通じて、非営利法人が今まで以上に社会から信用され、市民との距離が縮まり、社会的課題に取り組む活動がより広がってほしいという願いを込めて、本法人を推薦いたします。
投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。
NPOが社会で担う役割の重要さを踏まえて、NPO会計税務専門家ネットワークさんは社会のペインのど真ん中に直球を投げているような存在ではないかと思いました。(松木耕)
NPOの会計に関するガイドラインの制定など今後の非営利団体にとって重要な取り組みをされていると感じたため。(清水絵理)
今回の推薦文を拝見して、あらためてNPOは遠い存在ということを感じました。そんな中で、会計、それに伴う情報開示で説明責任を果たすことで、NPOがより身近な存在となるように活動をしているNPO会計税務専門家ネットワーク(NPO@PRO)という視点は、なるほどと思いました。ここを第1位として投票しました。今回も、社会問題とは「遠い」テーマだったので、推薦団体もそれぞれ全く違う視点で選ばれていて、勉強になりました。(山田泰久)
NPO ではありませんが、自分自身も非営利団体の運営に関わっており、意義があることと理解しつつも、プライベートのほとんどを費やしながらの会計事務処理が負担にならないといえば嘘になります。よってここの活動は多くの団体の助けになるのだろうな、と感じました。(白川みちる)
今回は、テーマに沿って、自分から一番遠そうなものの順番で投票してみます。何かしようとしたときにどのようにお金を集めて回すか。それは社会や他者とコミュニケーションすることでもあるのだろうけど、難しいなと思ってしまいます。そういう経済の事だけに留まらずにまるごと支援してくれそうなNPO会計税務専門家ネットワークに投票します。(阿曽祐子)
今月も素晴らしい推薦先ばかりでした。悩みました。推薦人の皆さんありがとうございます。結果、NPO会計を第一希望としました。活動がNPOの諸領域を横断し、かつ会計・税務という分野に特化している点に興味を惹かれました。また、専門家としてNPO活動をアシストするだけではなく、税理士・会計士側へのNPOに関する研修やサポートなども行っているとのことです。「私たちは、自発的に様々な社会的課題の解決に取り組むNPOの活動が、人々から共感され、活発になる社会を目指します」というビジョンを専門家ならではの見識と立ち位置で具体化されているように感じました。「遠い」というテーマにも触発されて、直接社会課題を扱う活動よりも、一階梯抽象的な活動に投票することとします。(本間盛行)
行政や民間企業が取り組めない社会課題の受け皿として、NPOの存在は欠かせないものだと感じています。そんなNPOの本来の主たる取り組みとは異なる「会計税務」業務のコスト負担をミニマムにすることができれば、本来の取り組みの加速に繋がると考えます。社会的課題の解決に取り組むNPOの活動が、もっと活発になる社会作りを応援したく、寄付させていただきます。(疋田裕二)
NPO法人には会計基準がない、とは知りませんでした。非営利団体が支援をうけるための正当性を示していくことは重要です。同時に、公的支援を受けるための手続きそのものが業務負荷を増やす一因になっていると聞きますので、その両面で支援をされている「NPO@PRO」に投票したいと思います。(森康臣)
寄付や公金を原資にした活動を確実にドライブしていくために、会計などの業務支援を非営利で行うことの意義は大きいと思います。組織は時に「やらざる得ないこと」をやり通すために、目的ではないものを目的化するケースがよくあると思います。手段が目的になり、目的が二の次になることは良くあると思います。こういうケースで社会を改善させる可能性のある原資を無駄にしてしまうことは良くない事だと思います。活動するエンジンを空回りさせないために、税金や寄付者からの資金を無駄にしないための、ほんの1つかもしれませんが、有益な活用だと思いました。(福原寛重)
「NPO会計」の推薦人の方の「NPO法人では・市民からの信頼を獲得すること・本質業務に集中しながら、きちんと会計業務を行う実務力の向上の両方が必要になるといえます」に全く賛同します。大阪での肌感覚ですが、巷では、「NPOって何してんの?」「ボランティア?お金なくて大変やなー」で終わっちゃう。「儲からへんやろ、な! まぁがんばりやー」NPOはなぜここまで清貧を求められるのか。遠いんです。なんとか今の固定観念を変えていってほしいです。(藤岡達也)
寄付先に正解はないということを多面的に認識できた議論でしたが、そう考えると、寄付を堂々と主観的に行いたくなりました。NPOが説明責任を果たすということに必要以上の労力をとられていることはもっとも実感に近いことと、それも含む監視社会のようなものへのNoのメッセージとして、この寄付先を選びたいと思います。(中村雅之)
相変わらずNPOへの不信は根強くありますが、その最たるものはお金にまつわるものと思います。法人の会計は極めて重要であるにもかかわらず、敷居や専門性が高く、団体起業や運営の大きな足かせにもなりかねません。NPOが気軽に立ち上げられる社会の実現に向け、こうした団体の支援が極めて重要だと思います。(桂大介)
推薦文に賛同いたします。私はNPOで働いており、NPO@PROの存在に支えられていることを実感しています。
NPOの現場で働く者としては、もっと受益者と向き合う時間をとりたいのに、報告や会計などにかなり手間をとられてしまい、ストレスがたまる毎日です。報告や会計は、信頼を獲得するために大切なことだと理解してはいますが、本来かけるべきところに力をさけなくなるので、できるだけ省力化したいのです。新しい贈与論のメンバーでの議論の中で、「最近は監査社会になってきている。NPO@PROに寄付することは、この流れを肯定してしまうことにつながるのではないか」という意見が出て、NPO@PROを選ぶかどうか迷った瞬間もありました。
もし、NPO@PROが存在せず、様々な団体がバラバラに悩みながら会計をしていたとしたら、今よりもっと無駄が多い社会になっていたかと思うので、NPO@PROに投票いたします。(鈴木亜香里)
新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。現在は新規会員も募集中ですので、ご興味ある方はトップページよりご確認ください。
運営
法人名 一般社団法人新しい贈与論
代表理事 桂大介
設立 2019年8月1日
ウェブサイト https://theory.gift
連絡先 info@theory.gift
メディアキット ダウンロード
「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。