共同贈与コミュニティ新しい贈与論(代表:桂大介)は、櫻スタートラベル 代表 櫻井純氏に対し65万円の寄付を行ないました。
新しい贈与論では毎月会員の投票により決定される寄付である共同贈与を行なっています。2021年05月はしらかば診療所、米NPO Limbitless Solutions、櫻スタートラベル 代表 櫻井純氏の3候補があがり、稲垣景子、阿曽祐子の推薦した櫻井純氏が最多票を得ました。
推薦文は以下の通りです。
「旅行会社櫻スタートラベル 代表 櫻井純さん」を推薦します。
■「櫻スタートラベル」とは
櫻スタートラベルは、神経系の指定難病と闘う2名により運営されています。主な事業内容は旅行業です。なかでもご自身たちが当事者であることを活かして障害者や高齢者の相談を受け、希望にかなう旅や外出を企画して実行することに力を入れています。
代表の櫻井さんは会社員だった2014年秋(26歳)に急に体が動かなくなり、検査を重ねて神経性の難病と診断を受けます。入退院を繰り返す継続的な治療が必要となり、会社を辞めざるをえなくなりました。失意の櫻井さんは、入院の合間に南の海に出かけます。満点の星空・海の幸・現地の人のあたたかさに触れ、生きたいと思いなおしました。「自分には無理だと思っている障害者や高齢者にも体験してほしい!」過去の経験を活かして、旅行会社を起業することにしました。
櫻井さんは、現在も身体の衰えを感じながらも、障害者・高齢者の旅の企画・支援、ユニバーサルマナー検定(https://universal-manners.jp/)の講師、失語症意思疎通支援と、あちこち飛び回って精力的に活動しています。コロナ禍でも「こんなことしたい!」という人がいれば、できる限りの準備をして旅を実行しています。
2021年4月30日にお客様の旅行添乗を報告する櫻井さんブログです。「昨年より日々新規感染者数増加や緊急事態宣言、まん延防止措置の話題は尽きません。自分達も持病で旅行を安易に推奨する立場ではありませんが、(途中略)私達が旅行会社として旅に関わることが病気や障害理解に繋がり、理解がまた施設改修や障害雇用に繋がり、誰にとっても優しい環境に人に生まれ変わっていく。そんな循環が素晴らしく応援を続けてます。」(https://www.sakurastartravel.com/single-post/shirahama-keyterrace-hotel-seamore)
■推薦人①より:当たり前の崩壊と更新
櫻井さんは推薦人の私が「贈与」に目を向けるきっかけを作ってくれた人です。
2018年、私はたまたまが重なって櫻スタートラベルが企画した「杖と車椅子で行くウルル&シドニー6日間の旅」に一旅行者として参加しました。櫻井さんを含めて車いす2名、失語症2名、健常者3名というメンバー構成でした。健常者3名で障害を持つ4名を支援しながらの旅になると覚悟しました。櫻井さんの綿密な準備にもか関わらず、旅の当初から大小の想定外トラブルが起きます。私たちは、徐々に助ける者・助けられる者から、ウルル登頂を実現して無事に帰国することを目指す協働者となりました。身体の自由が利かないこと、すぐには言葉が出てこないことは、違いでしかありませんでした。車いすの女性Tさんの好奇心と行動力、失語症の女性Yさんの屈託のない笑い声。「他者のためになろう」などと考える以前に、その一瞬その場に必要なこと(声がけ、アイディア出し、雰囲気を変える等々)に動こうとする彼らを見ているうちに、「障害」「支援」という言葉の意味がガラガラと崩れました。「障害者」と名づけて分けることで失っている関係があったのです。これは何も「障害者」に限らないのです。所与と考えているあらゆる定義に言えることだったのです。
旅の費用は、もちろん参加者自身の負担。ただ障害者ゆえに必要な費用(車いすの昇降機付きバス費)のみをNPO法人TravelForwardが支援してくれました。会ったこともないNPO法人の会員たちからの贈り物は、私の「寄付」の定義も更新してくれました。「新しい贈与論」の門を叩いたことにつながっています。(※TravelForwardはコロナ状況を鑑み2020年に活動を停止。)
櫻井さんの旅に参加した多くの人は、誰かを支援したい、ほかの人にも同じ体験を味わってほしいと思うようです。ウルルの旅の失語症2名は、旅を諦めていた仲間のために「失語症者とともに創る白浜団体バスツアー」を企画し、半年後に櫻スタートラベルと一緒に実行しました。
櫻井さんの行動は関わった人のなかに「ありがとう」と「お返ししたい」の循環を生み出します。それはバトンリレーの如く”手から手へ”と願いを重ねて渡されます。おそらく櫻井さんの身体が動かなくなる日がきたとしても櫻井さんに始まった輪は動き続けるに違いありません。
■推薦人②より:贈与の循環
推薦人パートナーの方の経験に強く心を動かされたことはもちろん、「贈与の循環性」に大きな興味を持ち、推薦させていただきます。
・参加せず資金だけを届けてくれる人の思いものっかって旅が成り立ったこと。
・「支援する側」のつもりだった推薦人が、本当は相互補助だったことに自然と気づいたこと。
・ツアーの参加者が、次の誰かのために行動を起こしたくなること。内側にも外側にも見られる「次への贈与」は、とても印象的な返礼のひとつの形なのだと感じました。「新しい贈与論」からの贈与が、どんな「次へ」に繋がっていくか、とても見てみたい!と思っています。
代表の櫻井さんが掲げる「障がい当事者が旅行業を担う意味」からひとつ紹介させてください。
『訪れた足跡がまた誰かの道になる』
当事者だからこそ提供できる安心感を持って、世界のさまざまな場所に届けられる新しい足跡を、1つでも増やしていきませんか。
投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。
ハンディキャップがある状態での旅は大変だとおもいますが、同じ様なハンディキャップがある人が、理解ある上でプランしてくれる心強さは大きいとおもいます。(福原寛重)
今回はかつてないほどの難問ですね、、、いずれもすばらしい活動で順位がつけづらい。社会からの理解の得難さ、支援の必要性、新しい贈与論からの寄付金額の影響度を考慮し、旅行会社櫻スタートラベル(櫻井純さん)を第一希望とさせていただきます。コロナ収束後、遠慮なく旅行に行けるようになる時まで、このサービスが続いていることを心から願っております。(宮本聡)
社会的な意義もさることながら、関わった人が「支援する側」「支援される側」という一方的な関係ではなく、「協働」という相互性のある営みであることを体感した、という部分がこの「新しい贈与」が志向している関係性に強く共鳴しているように感じました。望ましい循環をうみだしていける取り組みを支援したいと思います。(志賀響子)
事業性があるということと、事業内容の素敵さが響いた。(横田龍欣)
どのような軸で判断すれば良いか非常に迷ったのですが、新しい贈与論は合理性や社会事情によって寄付先を決定するものでも無いなと考えたので、主観的に私個人が応援したい候補先に絞ることにしました。上の観点で考えたとき、私がこれまで知らなかった内容かつ、これまで個人的に寄付を行なっていなかったテーマが身体が不自由な方の旅行支援でした。私自身、旅行が好きなこともあって身体が不自由な方も旅行を楽しんでもらいたいなという気持ちも強く、櫻井さんを第一希望とさせていただきます。(中村祥眼)
「誰でも、好きなときに、好きな場所へ」という企業理念をこれほどまっすぐに、愚直に実現させようとしている組織はないんじゃないでしょうか。コロナ禍で旅を制限されるいま、その理念の重みを少しばかり想像できます。またなにより、櫻スタートラベルで企画された旅やイベントでの参加者さんの笑顔を見るに、いつか自分も参加してみたいと思いました。これからも一人でも多くの方にとって楽しい旅が届けられることを願っています。(中島真)
悩みに悩みましたが、やはり推薦先の櫻井純さんに投じさせていただきます。贈与・支援を目的とした活動でなく、「旅という共通の目的のもとに集まった人たちが、はじめからお互い様であったことに気付く」、見ようとしなければ見過ごしてしまうことが当たり前にある旅に大切な意味を感じています。(稲垣景子)
推薦人の方の推薦文に強い意志が感じられ、それが最後の決め手となりました。推薦人の方の経験を読む中で、その実体験を通して何かを「手渡され」そして「手渡していく」という、そんな感覚が強く残っているのかなと思いました。そんな感覚に寄り添いたいというか、大切にしたいなあと思い1位としました。(嶋田康平)
どの団体も、現状の仕組みや、社会の注意から抜け落ちてしまいがちな対象をサポートしているので、非常に難しい選択でした。今回は、櫻スタートラベルさんへの寄付を希望します。今の自分の生活の側にない社会課題には、どうしても無関心になりがちなので、こうした取り組みを行っている当事者の活動を知ることはとても大切だと改めて感じます。何らかの問題を抱えている当事者が、アクションを起こしやすい環境を整え、そのアクションを社会全体で共有できるような仕組みがあれば、空いてしまっている社会の穴を少しずつでも塞いでいけるのかなと思います。そういう意味で推薦者の方が参加した障害者と健常者が、一緒に旅をするツアーは、お互いの認知の溝を埋める効果が高く感じられ、レギュラーツアーとして催行してもらえれば、一度参加してみたいなと思いました。(西信好真)
ご自身の体験に基づいて始められた活動ということもあり、説得力があると思いました。(太田睦)
受益者の属性や社会情勢を含め、資本が集まりづらい団体なのではないかと感じたため。(中村多伽)
第一希望は櫻スタートラベルさん、ツアーに参加された健常者が、障がい者を助ける人ではなく相互に助け合う仲間に変わったという話が印象的でした。またツアー経験者たちが、他の人にもこの体験をして欲しと次のツアーを企画したというお話からも、まさに「手」から「手」へ受け渡されていく行動の連鎖になるというイメージが沸き、今回のテーマに一番フィットしている感じがあり第一希望にしました。(浅井美絵)
バリアフリーに代表されるように、街の部分部分の構造において障がい者に負担をかけないような取り組みは増えている一方で、旅行という行為はやはり彼らにとってまだハードルは高いと思います。「杖と車椅子で行くウルル&シドニー6日間の旅」が実現されたのは関係者各位の強い思いの賜物であったと感じました。贈与の循環という観点も非常に興味深く、寄付を行うことで今後その性質がより現れてくるのではないかと期待して、一票を投じます。(荒川陸)
悩みましたが、櫻スタートラベルさんが、自身の経験から、障害者や高齢者の希望にかなう旅の実行に力を入れてる点に共感しました。障害者をターゲットにするとなると、設備や費用面含めて通常とは異なる努力が必要と想像できます。そんな櫻スタートラベルさんに寄付ができれば、より活動の幅を広げられるとともに、旅行会社として何か目に見える形での活用をしてくれそうという期待と希望を込めて寄付先にしたいと思いました。(疋田裕二)
推薦文に心を打たれました。障害のある方だけでなく、健常者にもすごい価値を提供されていることに感動し、自分も参加してみたいと思いました。子どもと一緒に参加してみたいです。(鈴木亜香里)
テーマを設けたからこそ出てくる寄付先という言葉にグラグラしました。自分が触れてこなかった分に関しては、そういうものだと思う部分が大きいですが、相対的に出会う機会が少ないものもあるのだろうなと思います。そんな思いで選びました。(前原祐作)
どちらかといえば国内の活動を応援したいという思いがあり、また旅行という選択肢が誰にとっても身近なものになればと思い櫻スタートラベルさんを選びました。(碇和生)
今回も、日頃意識したことのないマイノリティについて考える機会となりました。種類も全く異なり順番をつけるのに悩みましたが、推薦者と推薦先の関係性の近さに着目しました。贈与元と贈与先の繋がりが、贈与をきっかけに始まることもあれば、強まることもあるかもしれません。今回は、すでに推薦者が贈与先と関係性がありそうなため、そこからより贈与を通じて何かが強まりそうな予感がしており、そこに期待をしてみたいと思います。(Sho T)
いわゆる身体的マイノリティの方々の、生存にまつわる必要最低限の支援についての議論は、ある程度なされるようになった感覚があります。他方、「余暇」や「楽しみ」について言及されることはまだ多くありません。しかし、コロナ禍で「不要不急」のものこそが人生を豊かにするのだと、あらためて実感された方も多いと思います。本来「不要不急」とみなされがちな旅行に目をつけた櫻井純さんのような活動は、あらゆる人が豊かな生を送れるようになるため、とても重要な活動だ考えました。(小池真幸)
新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。時折新規会員も募集いたしますので、ご興味をもたれた方はニュースレターへご登録ください。
運営
法人名 一般社団法人新しい贈与論
代表理事 桂大介
設立 2019年8月1日
ウェブサイト https://theory.gift
連絡先 info@theory.gift
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「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。