認定NPO法人育て上げネットへ寄付を行ないました

新しい贈与論は、認定NPO法人育て上げネットに77万円の寄付を行ないました。

新しい贈与論では毎月会員の投票により宛先を決定する共同贈与を行なっています。今月は「罪」をテーマに推薦を募集し、「Community Nurse Company 株式会社」「認定NPO法人育て上げネット」「法テラス(日本司法支援センター)」の3候補があがり、三上遼、原拓海の推薦した認定NPO法人育て上げネットが最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。

今回の探求テーマ「罪」。その内側で出会ったのが「罪悪感」というキーワードとこの体験記*1でした。

「ひきこもるようになったのは大学を辞めたころでした。一番辛かったのは罪悪感をずっと抱えていたこと。「何もしていない自分」への不安や申し訳なさを感じるたび、家族と顔を合わせるのも嫌になりました。朝は出勤する人や学校に行く人たちの存在が罪悪感を強くするんです。どんどん、朝が来るのが怖くなって夜更かしが続くうち、昼夜逆転の生活を送るようになりました。しばらくはそんな状態でとにかく自分を責めて、責めて、どうにかしなければと思うのですが、どうしたらいいかわからない。」

私自身はひきこもりの経験はありませんが、この「罪悪感」にはどこか共感する部分があります。例えば、朝になってもなかなか起きられず、隣室から聞こえる家族の生活音に胸が痛むとき。最初は小さかった「罪」の意識が負のループに取り込まれることで自己増幅され、いつのまにか自分の手には負えない存在になってしまうのではないのでしょうか。このひきこもり問題は、遠い他人事ではなく、自分たちに襲い掛かってもおかしくないと、この体験談を読む中で勝手ながらに考えてしまうのでした。

この体験記の掲載元でもある認定NPO法人育て上げネットは、就労訓練プログラムをはじめとした若者とその家族への援助を行う団体です。そして、この「罪」の意識の連鎖から抜け出す一助を出来るのが同団体なのではないかと考えます。

また、Webサイトや代表インタビュー記事*2にも多く登場するのが「社会投資」というキーワードです。自分自身に直接利益をもたらすものではなく、時を超えて社会全体に利益をもたらし、その良好な社会が最終的に自分に帰ってくるという考え方。これは、投資でありながら贈与でもあるのではないかと私は感じます。

7月の囲炉裏では「東浩紀の贈与論」として「誤配」の概念に触れました。投資に大きな余白を忍ばせ、交換の思想と贈与の思想を一致させることが出来るのが、まさに同団体への寄付なのではないでしょうか。

*1 https://www.sodateage.net/6596/
*2 https://note.com/sodateagenet/n/n869ea911f394

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • 罪を感じ投票を後回しにしてしまう自分を楽しみながら、今回は早めに投票しました。投資でありながら贈与、贈与でありながら投資。推薦文を読んで、そういうことがしたいという気持ちになりました(稲田遼太)

  • 2012年のデータで34歳、ということは今は10年後のデータで鑑みると44歳...きっかけはさまざまでしょうし、今もなお苦しんでいる方もいらっしゃることと思います。少しでも前に進められている方がいることに希望を持ちたいですね。(白川みちる)

  • 罪悪感にはいつも悩まされています。罪悪感を抱けば抱くほど、行動ができなくなっていき、つらい思いをします。それを支援されている育て上げネットさんに一票(鈴木亜香里)

  • 若者への就労支援を軸に据えつつ、社会貢献ニーズのある企業と協働して幅広い教育・支援プログラムを実現させている団体であり、応援の気持ちで寄附先に選びました。(朝野椋太)

  • 一度引きこもると、ややもすると引きこもった本人が「落語者」「自分なんて」と感じてしまいがちだと思っています。自分自身へのそういった罪悪感を減らす一助になればと思い、投票いたします。(山浦清透)

  • 何もしていないことの罪悪感が、さらにひきこもりを強めていったという体験者の言葉にはっとさせられます。私たちは日々の生活の中で、常に小さな罪悪感と共に生きている。その付き合い方や乗り越え方を教えてもらえる機会や環境が無ければ、飲み込まれてしまうこともあるのですよね。育て上げネットさんの活動は日本の若者支援をこれまでもリードしてきましたが、再スタートが難しい社会だからこそまだまだこの領域への支援が必要だということもあり、一票入れさせていただきます。(浅井美絵)

  • 自分も引きこもりではないですがその気質があるのでよくわかります。自分は就職氷河期世代でしたが家族を含め親切な人たちに囲まれていたからこそ引きこもりや無職になっていなかったと思うときがあります。時々、他の就職氷河期のニュースを見てなんとも言えない罪悪感を感じることがあります。(茂木大輔)

  • 推薦文のキーワードである「罪悪感」が決め手になりました。贈与と負債(≒罪)は表裏一体とよくいわれますが、必ずしも負わなくてよかったはずの罪、その意識を和らげる贈与につながればいいなと思いました。(中川瞬希)

  • 今回も知らないことばかりで嬉しい発見のある推薦文でした。特に育て上げネットの推薦文にとても共感したので1位にしました。(綿貫美紀)

  • 「ひきこもれない」若者、トー横(新宿)や、グリ下(大阪)に行けない人たち、いったい、いったい、どこまで追い込まれるんだろう。社会の端へ、隅へ、逃げていく先に「希望」を見つけることは、今とても困難な時代なんだろうと感じます。敬意を表して「育て上げネット」に投票します。(藤岡達也)

  • マイノリティの支援についてこのところ考えていました。友人から勧められて読んだ本の内容が、特殊性癖を持った人の孤独と生きづらさ、そして犯罪についてだったのです。
    社会のシステムや常識から逸脱した人、という括りで言えば引きこもりも特殊性癖も同じ。彼らは社会とのつながりがほとんどない状態です。適切な支援を得られなければ何らかの罪を犯す可能性が高くなってしまいます。
    引きこもる人たちが社会の中に居場所を見つけられるように、寄付を通じて支援していきたいと思いました。(溝口奈緒美)

  • 「自分が何もしていない」という罪悪感に囚われ、身動きが取れなくなってしまう、という状態には覚えを感じること、そして、その自縄自縛の状態にジョブトレーニングで風穴をあけ、社会とつながりを取り持つ、という活動に意義を感じた為。(志賀響子)

  • 私が長い間応援している団体の一つが育て上げネットです。引きこもりの若者支援だけでなく、少年院の入所者・出所者支援をしていることもぜひみんなに知ってほしいです。選ばれますように!(宮本聡)

  • 今回も非常に迷った。育て上げネットの代表挨拶にあった「社会投資」について、今後自分の人生において時間をかけて考えていきたいと思った。特に日本において最大の課題とも思える若者支援に少しでもお金が回るといいなぁ。(高城晃一)

  • やはり支援が急務なところに、寄付をしたくなりますね。法テラスさんは、どうして被害者がいないにも関わらず、寄付という行動で罪を償う必要があるのだろうと思ってしまいました。(松本慕美)

  • 育て上げネットを第一希望とします。「働きたいのに働けない」という人たちがいること、そしてそのブレーキに「罪悪感」があるという課題意識に共感しました。そのループから抜け出すには支援が必要だと思います。全ての人が働かなければならないとは思っていませんが、私自身が若者の一人であるため、若者の社会的に自立していくことの困難を想像して活動に意義を感じました。(市村彩)

  • 推薦文、特に体験記に対しての推薦人の「最初は小さかった「罪」の意識が負のループに取り込まれることで自己増幅され、いつのまにか自分の手には負えない存在になってしまうのではないのでしょうか。」というコメントに惹かれました。(横山詩歩)

  • 投票の話し合いの中で、ブラブラしていることに「罪悪感」なんて抱かなくて良いというコメントにとても共感しました。そんな社会を作って欲しいという願いも込めて、若者支援をする同団体に寄付をしたいと思います。(原拓海)

 新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。現在は新規会員も募集中ですので、ご興味ある方はトップページよりご確認ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。