一般財団法人日本熊森協会へ寄付を行ないました

新しい贈与論は、一般財団法人日本熊森協会に万円の寄付を行ないました。

新しい贈与論では毎月会員の投票により宛先を決定する共同贈与を行なっています。今月は「アニマル」をテーマに推薦を募集し、「日本IDDMネットワーク」「一般財団法人日本熊森協会」「宝牧舎株式会社」の3候補があがり、中嶋愛・鈴木瞳の推薦した一般財団法人日本熊森協会が最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。

 https://kumamori.org/

2025年の世相を表す漢字として選ばれたのは「熊」でした。近年は人里での負傷事例が続き、クマ問題は動物保護や生物多様性の枠を超え、安全保障問題として対応を協議する段階に至っています。自衛隊や警察の出動まで想定される事態は、『シン・ゴジラ』を思い起こさせます。

クマ問題は長年、一部の過疎地域や一部の動物愛護者・自然保護団体の問題とみなされてきました。それが人身被害の急増により、「誰かの問題」から「みんなの問題」へと転じ、国レベルの社会問題として認知されるようになりました。このことは、解決に向けた大きな一歩になる一方で、即効性のある対処に偏り、これまで半ば放置されてきた構造的な原因への取り組みが更に後回しになるリスクもはらんでいます。

クマと人間の衝突は、森林政策、農業政策、気候変動、そして地域社会の変容が相互に影響しあう構造的課題であり、本来は長期的な視野で解決策を組み立てる必要があります。行政、市民、専門家、実務家が協力し、数十年、百年先のあるべき姿を見据えながら、現在の被害対策も同時に進めていく二段構えのアプローチが不可欠です。

公益財団法人日本熊森協会は、28年前に自然保護を目的とした任意団体として設立され、奥山の再生や水源保全など、生態系全体の保護を活動の中心に据えてきました。現在は公益財団法人として全国31都道府県に支部を持ち、政策提言やフィールドでの活動を積み重ね、全国的な知見とネットワークを築いています。

クマ問題は「保護か駆除か」という単純な対立構図に陥りがちですが、同協会は保護の立場に立ちながらも駆除の全面否定ではなく、緊急の被害防除対策の徹底や、公的な見舞金制度の必要性など、複数の選択肢を組み合わせた現実的な対応を提案しています。

ネット上には誤情報も散見されますが、自治体への抗議の首謀者とする説は団体が否定しており、特定政治勢力との結びつきも確認されていません。

熊森協会の持つ全国的なネットワークやアドボカシー機能は、対立ではなく建設的な議論を育て、長期的な解決策を模索するための貴重な基盤となり得ると考えます。

団体のウェブサイトにはこう書いてあります。「人類が生き続けるには、大型野生動物たちが造る保水力抜群の最高に豊かな水源の森を、生き物丸ごと残すことが必要です」。今月は、生態系そのものの未来に取り組んでいる熊森協会を推薦します。

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • 命は限りあるものだと、そんなことは誰だって知っている。でも、それがどんな絡み合いやもつれあいでできあがっているかはおそらく生涯をかけたって知らない。私たちの生活が、あるいは動物たちの生活が、誰のどんな動きによって安全であるのかさえも。いつまでもそこに懸命に活動する人たちを、心から応援します。(土田亮)

  • 熊が多く住む長野に住んでいるので熊森協会さんを応援したいです!(七條晶子)

  • 昨今のニュースでも「熊」の問題は「極論」もしくは「難しい問題とだけ伝えた議論放棄」の状態をよく見かけます。長期的な視点も踏まえた具体的な提案をされてるこちらの団体を応援したいと思いました。(熊谷友幸)

  • 1番自分の関心に近いものを投票させていただきました。(佐藤真陽)

  • 最近話題の熊問題への対応があまりにも行き当たりばったりで自分勝手だとニュースを見て感じており熊森を第一希望にしました。中学時代に自然保護問題を自治体や国に訴えていたメンバーが志を持ち続けて団体設立に至っているところに、「今流行りのSDGsだから」とは違う真摯さを感じました。

  • 「熊」は、2025年の12月に相応しいと感じました。(横山詩歩)

  • 今回はかなり迷ったのですが、実家の付近に熊が出没したこともあってもはや他人事ではなくなりつつある熊に投票しようと思います。(三上遼)

  • 甲乙つけがたく迷いましたが、いまHotなTopicsなため。(日吉良太)

  • 森や山を購入し保全する仕事が不動産に携わる身として、素晴らしいなと思ったためです。資産や投資としての意味が大きい不動産ですが、本来は自然に根付いたものであり、保全することの大切さを感じました。

  • 熊の問題を大きな視点で捉えた活動が素晴らしい。(渡辺健堂)

  • 最近は、草刈りや間伐をやるようになり、里山の環境を日常的に考えるようになりました。近くで熊の目撃情報もあり、熊対策もやらないといけないかなとも思う今日この頃、熊森協会の活動に今後も注目していきたいと思います。(石田智子)

  • 熊の絶滅を危惧した中学生たちが、理科の先生と開始した活動だという経緯や、その後の地道な30年の発展の経緯を見て改めて、時間がかかる問題に取り組むことへの敬意を感じました。(中村雅之)

  • “バー・ラム・ユー、バー・ラム・ユー、羊毛を着た同胞たちに、かわらぬ忠誠を、かわらぬ愛を“

    〜映画『ベイブ』より(牧羊犬コンテストに出場した子豚のベイブが、家畜の羊たちに向かって唱える呪文)
    野生動物は、自分の心の赴くままに生きています。一方で、家畜動物は自分の生き方を人間の都合に合わせて、とても制限して生きています。人間はこの世界に家畜を生みだすとともに、自分自身もまた家畜に堕ちる存在となりました。社畜とはつまり家畜のことですものね。(遠い目)
    しかし、レヴィ=ストロースが主著『野生の思考』で看破したように、人間の思考にも「野生状態」があります。それは近代の効率や計画などが、いかに家畜化しようとしても、押さえつけられることがなく、しなやかにいまも作動を続けています。
    神話は、人間がまだ動物とひとつだった頃のことを語るお話です。いまは深い溝が出来てしまった人間と動物のあいだのコミュニケーションの回復を語ります。その世界中の神話のなかで、森の王たる存在、それが熊でした。
    自分を家畜化し、生き方を制限して生きる私たちが、自分の心に野生を取り戻すにはどうしたらよいか。その「野を開く鍵」(詩人アンドレ・ブルトンの言葉です)を握っている存在、それが熊でした。だからこそ深い尊敬と畏れをもって丁重に扱われてきたのです。
    風景にANIMA(アニマ)(ラテン語で「生命」や「魂」)を吹き込む行為は、今では主にanimationが担っていますが、ほんらいこのアニマを吹き込む存在は、animalでした。
    私は「熊を丁重に山へ帰す」という行為が、人間の思考に、現代においても、とても重要な創造的空間を開くように思えてなりません。今回はテーマも候補の団体の推薦文もどれも素晴らしく、かなり悩みましたが、日本熊森協会を支援します。
    熊より(前田ひろし)

  • 一般財団法人熊森協会を推薦しました。(中嶋愛)

  • 「対症療法」だけでなく、むずかしい政策提言にも取り組んで、問題の構造自体を変えようとしているのが素晴らしい活動だと思いました!中学生の時から30年以上にわたって活動を継続されているのも素晴らしいと思います!(坂本治也)

  • どの団体と関わり続ければ「答えがない問」を考え続けられるかを基準としました。お話を聞いていく中で、くまではなく森のほうに焦点があたり、一般財団法人日本熊森協会を1番にしました(アニマルというテーマから離れてしまいましたが)。自然そのものなのか、森に住んでいる動物なのか、微生物なのか、はたまた菌類なのか。考えたいテーマはまだ決まってはいませんが、数十年単位で考え続けたいなと思いました。(佐藤みちたけ)

  • 推薦人です。「豊かな森は、人間も含め全生物が生きていくために必要」という考え方をもち、日本の未来を考える活動だと思いました。森に入るといろいろなものを受け取ります(与えられます)。熊を守ることが日本の森を守ることに繋がるということが学びでした。実際に団体の総会に行くといろんな立場の人がいらっしゃるということを寄合で聴けたのは面白かったです。(鈴木瞳)

  • とても悩ましい投票でしたが、推薦人の「NPOとして対症療法的ではなく原因療法をしっかりしているのが素晴らしい」という点が背中を押し、熊森協会に一票を投じます。NPO・社会活動のモデルケースとしても応援いたします。(中村祥眼)

  • 代表の方が中学生の時に感じた疑問に真摯に取り組み、着実に活動を広げてきた時間にも敬意を表したいと思います。また、ここ数年のクマ問題もあり、森を守る活動、野生動物の保護、政策提言まで取り組む「日本熊森協会」の取組を多くの方に知っていただき、参加してもらいたいと思います。(石田篤史)

  • 葛藤の中で熊を狩る...悩みながら投票する...ということで日本熊森協会。(佐々木優)

  • 今だからこそクマについて包括的に取り組んでいる団体に寄付したいなと。捕殺すれば解決というわけではないということも初めて知り、考えさせられました。(市村彩)

新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。ご興味のある方はぜひご参加ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。