このブログでは共同贈与コミュニティ「新しい贈与論」から、
コミュニティ内で交わされた対話の断片をお伝えします。
Author: 桂大介
第二回の対話テーマとなった「災害募金」は、コミュニティメンバーのほとんどが経験していた。その形態もさまざまで日本赤十字に寄付をしたという人もいれば、CAMPFIREやREADYFORを利用したという人もいたし、募金箱を使ったという人もいた。幾人かはそれが習慣となっているようで、ある程度の災害となれば毎回寄付を行っているようだった。
前提として、災害募金は大きく4つに分けることができる。台風19号を例に解説する。
日本赤十字社または共同募金への寄付
自治体へのふるさと納税または寄付
支援NPO/NGOへの寄付
その他民間の基金や法人を経由した寄付
上記のうち1と2は義捐金(義援金)と呼ばれ、被災者に渡されるお金となる。これらは義援金配分委員会という機関を通し、被害状況に応じて配分される。税制優遇があるのはもちろん、2の場合にはふるさと納税制度が利用できる。今回もふるさとチョイスやさとふるといったふるさと納税ポータルが特設ページを開いており、また手数料の受け取りを辞退している。実質負担2000円のみで数万円の寄付ができるとあって(それを寄付と呼ぶかはさておき)、一定の人気を得ている。これに対しコミュニティでは「25%のお肉をもらえるはずだった分は”寄付”してる」という見方もあった。
3はCivic Forceやpeace windsといった非営利団体が災害支援活動を行なうための費用となる。お金は被災者に直接渡されるわけではないが、ガレキ撤去や支援物資の配布など間接的に被災者を助ける手立てとなる。こちらは義捐金と区別して支援金と呼ぶのが慣例となっている。税制優遇については寄付先の団体によって異なり、寄付先が認定NPOや公益財団といった公益性の高い法人格をもっている場合のみ税制優遇がなされる。クラウドファンディングサービスのREADYFORではクラウドファンディングと銘打ちながらも、こうした団体を選んで寄付する形をとったため、税制優遇措置が受けられるようになっている。
4はYahoo!募金やCAMPFIRE、コンビニ募金などが該当する。概ね義捐金となることが多いようだが、支援金となる場合もあり、募集団体によって異なる。他と大きく異なるのは税制優遇措置がないことで、ここには注意する必要がある。一方で例えばYahoo!募金は今回3000万円のマッチング寄付を用意しており、最大3000万円までのあいだ、寄付金と同じ額をYahoo!が上乗せして寄付を行なった。CAMPFIREは手数料の一切をCEO家入一真氏が負担し上乗せ支援することを発表した。Tポイントを始めとする各種ポイントが使えることもあり、こうした仕組みは民間を通した支援ならではだ。
コミュニティの議論では災害寄付について、資金の使途やトレーサビリティが話題に上った。被災者からの感謝の言葉までは求めないにせよ、渡したお金がどのように使われるのか気にする寄付者が多かった。団体の選定はまちまちだったが、具体的に日本赤十字社の名前があがった他、「信頼できるNPO」「NPOなどで、団体運営の歴史や用途の説明など、信頼性高そうなところ」という声があがるなど、やはり信頼性が重視されていた。信頼性の重視は、災害募金においてとりわけ重要視されているようだった。その他クラウドファンディングを利用した者も多くいた。
ふるさと納税を検討した者もいたが、被災地の写真を前に、どこか一つを選ぶことができなかったそうだ。
災害募金は緊急時贈与(EMERGENCY GRANTS)の一種であり、悲劇性と可視性に連動するという特徴がある。ふるさと納税サイトはまさにこうした特性を十分に活用して、寄付を集めているように見える。目を覆いたくなるような被災地の画を目の当たりにし、何か自分にできることはないかと寄付を行なう。それ自体は当然責められる行為ではない。
しかし、ノートルダム大聖堂の火災へ巨額の寄付が集まったとき、イエロージャケット運動からいっそう抗議の声があがったのは記憶に新しい。衆目を集める惨劇の裏には、つねに見慣れてしまった惨状がある。いかなる贈与を行なうべきか。新しい贈与論は模索を続けたい。