新しい贈与論が5周年を迎えました。

こんにちは、代表理事の桂です。2024年8月1日で、一般社団法人新しい贈与論は設立5周年を迎えました。

5年の間には浮き沈みがありましたが、さまざまな方にご支援いただいて、なんとか継続することができました。今回は5周年の記念記事ということで、これまでによく聞かれた3つの質問にお答えしたいと思います。

質問は「どうして新しい贈与論を作ったのか」「会員にはどういう人がいるのか」「なぜ寄付ではなく贈与と名付けているのか」というものです。

まずは、どうして新しい贈与論を作ったのか。よく聞かれます。どうして作ったんでしょう。正直わたしにもよくわからないのですが、でも一つ言えるのは、新しい贈与論を一番待ち望んでいたのはわたしだということです。手前味噌ですが、他では味わえない幻想的な時間を過ごしています。

寄付先を決めるというのは、とても奇妙な行為です。部分的にみれば、人助けに似ていたり、投資に似ていたり、推し活に似ていたり、政治の投票に似ていたりするところもありますが、やはりそのいずれとも根本的には異なります。阿修羅像やケルベロスのように、それらすべての顔を持っているような気もします。

巷では「寄付をしたいけど、どこにすればいいかわからない」という声を、ちらほら耳にします。まったく同感で、寄付先の団体を選ぶのは、ほんとうに難しいことです。だったら、その難しさについてみんなで考えたら、悩む時間ごと面白くできるんじゃないか。そう考えてできたのが、この場所です。

寄付先の選択って、自分の価値観や人間観が問われている感じがするし、それについて議論するのは、ふだん表に出さない心の区域をさらけ出している感じがします。お互いの寄付の理由を聞くと、その人の人生が垣間見えてきます。そういう不思議な感覚を、みんなで共有できたらと思います。

次に聞かれるのは、どんな人がいるんですか、という質問。こんな取り組みに参加するくらいですから面白い人が多いんですが、あえてこういう言い方をすれば、ほとんどはふつうの人たちです。いまは全員で90人くらい。NPOの関係者もいますが、それほど多くありません。10パーセントか、それくらい。職業では会社員が一番多く、あとは士業、教員、研究者、経営者、学生などなど。さまざまな方がいます。

日常的に接する人間関係は偏りがちですが、ここには本当に色んな人がいて、そういう人たちと話すのは新鮮な喜びがあります。年齢、性別、肩書などに囚われずに、それぞれがひとりひとりの人間として会話できる場所です。

たまにNPO業界ではびっくりするくらい有名な方もいますが、そういう方もフラットに話しています。多くの方はNPOとは縁が薄く、ちょっと寄付が気になったとか、どこに寄付したらいいかわからないとか、ここに来るまで寄付したことなかった、という方もたくさんいます。新しい贈与論にはディープな議論もありますが、「寄付オタクの集まり」にしたいわけではありません。誰でも気軽に参加し、寄付や贈与について語れる場所でありたいと思います。ですから、これからも色んな人に来てほしいです。

さいごは、なんで寄付じゃなくて贈与なの、という質問。たしかに対外的におこなっているのは寄付だけなのですが、実はふだんの雑談や勉強会では、贈与に関するものが多いです。贈与というと堅苦しいですが、プレゼントやお土産、人助けやボランティア、ご祝儀やお賽銭。こうしたものはすべて寄付の親戚であると考え、これらを総称して、わたしたちは「贈与」と呼んでいます。

日本は残念ながら寄付の多くない国ですが、一方で、世界でも稀な贈答文化を育んできました。たとえばバレンタイン。バレンタインは舶来の文化かもしれませんが、そこにホワイトデーができて、義理チョコや友チョコまでできてきた。贈与を増殖させてきた。このような例はいくらでもあげることができます。日本は古来、贈答大国なのです。

寄付だけでなく贈与について考えることで、このように思考の射程を広げることができます。そしてチャリティ観念の希薄だった日本において、このような贈与の延長として寄付を考えることは極めて重要なのではないか--というのは、わたしの勝手な仮説です。興味があれば、一緒に話しましょう。

新しい贈与論は、いま新規会員を募集しています。

メインはSlackで、「井戸端」「居酒屋」「寄合」「囲炉裏」「喫煙所」「掲示板」といったチャンネルが並んでいて、のんびりと進行しています。あと月に一、二回はオンラインで集まる機会があります。たまにオフ会もやっています。

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