特定非営利活動法人日本行方不明者捜索・地域安全支援協会(MPS)へ寄付を行ないました

新しい贈与論は、特定非営利活動法人日本行方不明者捜索・地域安全支援協会(MPS)に88万円の寄付を行ないました。

新しい贈与論では毎月会員の投票により宛先を決定する共同贈与を行なっています。今月は「鬼」をテーマに推薦を募集し、「認定特定非営利活動法人育て上げネット」「特定非営利活動法人日本行方不明者捜索・地域安全支援協会(MPS)」「特定非営利活動法人プラス・アーツ」の3候補があがり、坂本治也、姜花瑛の推薦した特定非営利活動法人日本行方不明者捜索・地域安全支援協会(MPS)が最多票を得ました。

推薦文は以下の通りです。

https://www.mps.or.jp/index.html

◾️推薦先について

日本行方不明者捜索・地域安全支援協会(MPS)を推薦します。MPSは、「行方不明になってしまった家族を見つけたい」、「家出した家族と連絡をとりたい」家族を支援する日本初のNPO法人です。

相談事業や金銭支援を行ったり、ウェブサイトでは行方不明者を顔写真入りで紹介し、情報提供を呼びかけたりもしています。
https://www.mps.or.jp/mp_list/index_3.cgi


日本では年々行方不明者は増えており、昨年の行方不明者は年間約9万人にものぼっているそうです。これだけ情報通信技術が進んだ現代において、驚くべき数字だと感じます。
失踪理由は、疫病関係(認知症) 24719(18,709)人の次に、家庭関係12,899人、事業・職業関係9,615人と続きます。しかし、その家族が警察に捜索を依頼しても犯罪性がないと推定された場合、捜査対象にならず、家族は独力で探すほかないということです。

社会や家庭に限界を感じて、その場に居られなくなるということが、現代社会において多く存在しています。「居場所づくりをする」こととあわせて、「居られなくなった人を探す」「居なくなった人を想う家族によりそう」ことも大切だと思い、MPSを推薦します。

◾️テーマ「鬼」について

古くより鬼は人々から恐れられる異形の存在として知られてきました。全国各地には鬼が人さらいをする言い伝えや伝説がたくさん残されているようです。しかし、「鬼の目にも涙」というように、鬼にもきっと優しい一面があるんじゃないか。

そんな話をしながら私たち推薦人が最初に注目したのは童話「泣いた赤鬼」です。有名なお話なので、みなさんもどこかで一度は聞いたことがある話かもしれません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%A3%E3%81%84%E3%81%9F%E8%B5%A4%E9%AC%BC


「泣いた赤鬼」を読んだ後、私たちはどうしても「つづき」を想像してしまいました。青鬼さんの置き手紙を読んだ後、赤鬼さんはどうしたのでしょうか。居なくなった青鬼さんをきっと探し続けたんじゃないでしょうか。青鬼さんの赤鬼さんを想う気持ちは尊くもあり、なんとか村の人々とわかりあい一緒に暮らすことはできなかったのか。

もし、赤鬼さんが青鬼さんと再会できたら、村の人たちとも新しいかたちの関係をつくる可能性ができるんじゃないか。そんな願いを込めながら、私たちはMPSを推薦先として選びました。

投票にあたり会員よりあがった理由の一部を抜粋し紹介いたします。

  • 探されたくない行方不明者もいるだろうという前提ではありつつ、結局最後は人海戦術でしかないのでしょうね。こちらに寄付されることでそもそも行方不明者がこんなにいると知ることや、探すことについて考えを深めるきっかけになってほしいと感じました。(中村タカ)

  • 目に見えないもの、まだ起こっていないことはないものとして扱われやすいから

  • 昨年、父が舞茸取りに行って山で遭難したことがありました。3日後に見つかりましたが、見つかるまで、どうか死んでいても見つかってほしいと思ったことを今でも覚えています。行方不明になった家族や友人は、もう一度その姿が見たいと思いながら、不安な日々を過ごしていると思います。ですが、個人的に感じたのは公的な機関が捜索してくれる時間は短く、民間に頼むことが多いらしいが、その民間組織もあまり見つからずどうしていいかわからないということです。このような経験があったので、鬼のテーマで選んだというよりはMPSの活動を応援したいと思い、今回は選ばせていただきました。

  • 近くて遠くて、見えそうで見えないという、鬼というテーマとの距離感がどれも絶妙で悩みましたが、現在の自分から最も見えてなかったテーマを指摘してくださった順に選ばせていただきました。(阪本圭)

  • 行方不明になった家族の無事を願うご家族の声に、お腹の底をぎゅっと押しつぶされるような感覚がありました。年間9万人もの人が行方不明になっているという現実と自分の日常が隣り合わせにあることが、未だに信じられない思いです。(吉見新)

  • 悩みました。「鬼」とは、もとは“隠れて住む人のこと“(隠“オン⇨オニ“に読み方が変わったもの)だそうです。平安時代の辞書でも「鬼」は「隠れて、その姿を顕すことを“欲しない“もの」を意味しました。(『和名類聚抄』)
    「鬼」とは隠れた存在。放っておいてくれれば悪さをしないのに、無理やり暴かれたために、鬼になってしまった悲しい存在という意味です。だから鬼はある日突然現れます。『鬼滅の刃』でも、鬼はもともと人間ですね。
    ハイデッガーは、現代における『技術』というものは、「自然をあらわに暴く」ことを目的としていて、そのため、かえって自然からの応答を受けられなくなったと述べています。
    わたしにも引きこもりの時期があります。とにかく言いようのない「あらわに暴く」力から、隠れたかったのだと思います。「探さないで欲しい」という方の気持ちはよく分かります。だから、悩みました。
    失踪や「隠れたい」という気持ち。その多くは現代の「あらわに暴く」力から逃れるためで、結果として「あらわに暴く」力によって、「鬼」としてしか生きられない。本人がどう感じるかは一旦傍に置いて、そんな人々の足掛かりのきっかけとなるという意味で、私はMPSを支援致します。
    今回の提案はいずれも鬼を「隠されたもの」と読み替えて、見ることができました。鬼はやはり現代でも、隠されたものの代表だと思います。(前田浩史 )

  • 泣いた赤鬼を引き合いに出されたのが印象的でした。(小柴優子)

  • 行方知れず、、その時を思うと胸が締め付けられます。自衛や公的機関の支援だけでなく、アジールやコモンズの設置やご近所付き合いなども有効だと思いつつ、必要な方にはこのような団体の活動は心強いケアだなと思います。鬼と人の関係性は暗にそのようなコミュニティの機能にも言及されているように感じました(masa)

  • 鬼というテーマとの親和性が高いと感じたこと、また今回の候補団体の中でもMPSは全く活動を存じ上げず、今回の推薦を通じて知ることができたことから投票します(松井俊祐)

  • いずれも良い活動でとても悩みました。その中でも年間9万人も行方不明者がいることには非常に驚き、それらの助けになるサービスは価値の高いものだと感じたため1票。(高城晃一)

  • 大切な人が急にいなくなったときの悲しみは計り知れないと思います。(HT)

  • テーマとの連関を一番深く感じたため。

  • 情報提供ページにある「ご家族からのメッセージ」から伝わってくる感情に、心を揺さぶられました。警察に頼ることが難しく、自分たちで出来ることの限界もある中で、それぞれのご家族の想いが非常に伝わってきました。行方がわからないからこその不安や割り切れなさを抱えた状態で暮らす、ご家族の方たちに寄り添う活動の意義を感じましたので、MPSに投票したいと思います。(広井健一郎)

  • 一番「鬼」らしいエピソードだということと、失踪者を探すという「(北朝鮮による拉致など政治的問題は別にして)社会から広く共感されにくいけれど残された人間にとっては身を切る苦しさ」が想像できることが理由です。一方、サイトを見ると行方不明になるのは、災害・他人の意思・自分の意思の3パターンあり、「自分の意思」で失踪した方を探す手助けをする複雑さも感じています。

  • 「泣いた赤鬼」に感化されました。

  • 推薦人です。(姜花瑛)

  • ちょうど最近帰省した際に、母方の祖父が認知症かつ夕暮れ症候群で彷徨う可能性がありそうだということを知り、ショックと戸惑いを感じていました。もしかしたら私の祖父も行方不明者になるかもしれないし、そうした人びとやご家族を助けたい気持ちが湧いてきました。確かに探す/探してほしくない、プライバシーは懸念ではありますが、なるだけ見つかってホッとする居場所にいられたらいいなと思いました。(土田亮)

  • 今回推薦人としてMPSさんを推薦させていただきました。大切な家族が行方不明になってしまった方にとって、MPSさんのような団体はとても頼りになるものだと思いました。DV加害者や個人情報保護の問題には十分留意しつつも、こうした支援活動がより拡がっていくためのきっかけとして私たちの寄付金が使われたら大変嬉しく思います。(坂本治也)

  • 行方不明者がこんなにも多くいるということを、今日まで知りませんでした。自分が残される側になったときに感じるであろう困難も、はじめて想像しました。認知症の増加にも伴ってますます拡大していくであろうこの問題に対し、地道な取り組みを続けているMPSさんに敬意を表し、一票を投じます。(桂大介)

  • あまり資金的に余裕がなさそうなのと、チラシの行方不明者の傾向のところを見て、自分と近しいものを感じ、やはりMPSさんにしました。今回の寄付で少しでも運営が充実できるといいなと思います。(石田智子)

  • ほとんど知らないトピックであり、こんなに行方不明の方がいるということに衝撃を受けたというのが本音です。WEBサイトについて、みなさんから、声があがっていたので、それだけで信頼度が上がるのであれば、改修費用に充ててもらえるといいのかなと。珍しく具体的な使い方をベースに寄付先を考えました。(東詩歩)

  • MPSさんの活動は非常に難しいと思うのですが、その活動を通して再開を心待ちにしている人が増えると良いなと思いました。(菅野恒在)

  • 単純に9万人という数字に驚きましたし、探す側の課題感・無力感には共感できます。行方不明者の事情には色々あるでしょうが、難しい問題へ手を差し伸べることに敬意を感じて投票します。(中村雅之)

  • 先日開催されていた「行方不明展」という展示のyoutubeを見て、いたたまれない気持ちになりました。この展示はフィクションですが、実際に年間約9万人もの方が行方不明になっている事実を初めて知り衝撃を受けました。どのような理由で行方不明になったのか。。。中には行方を知られたくない人もいるかもしれませんが、残された側は気掛かりで仕方ないだろうな、と思いを寄せてしまったためMPSに一票。(市村彩)

  • ご事情があっての家出など、探される側にとって「捜索」が意に沿わないケースはあろうかと思いますが、ご家族からすれば会えずともせめて元気でいるのかどうか知りたい、という願いは何よりも切実なものでしょう。先の見えない不安の中で、他者の協力を信じられる場所が増えますように。(加藤めぐみ)

  • 探してほしくない失踪者もいる、プライバシーの問題がある等の懸念はもっともですが、この団体の代表者が元警察の方であるということを考えると、そういう正当な理由で捜査をしない・できないケースを多数見てきた経験からこの団体を立ち上げられたのではないかと思います。HPがこういう状態なども、こうした微妙な事情もあるのかなと(あまりにきれいに整備されたHPだとむしろプライバシーの問題を指摘されやすくなるとか)。推薦文の「居場所づくりをする」こととあわせて、「居られなくなった人を探す」「居なくなった人を想う家族によりそう」ことも大切」という言葉にも共感しました。こうした「目に見えない」もしくは「可視化しにくい」取り組みに光をあてることも新しい贈与論のようなグループの寄付の意義ではないかと思います。(中嶋愛)

新しい贈与論は今後も共同贈与という形の寄付を毎月続けて参ります。ご興味のある方はぜひご参加ください。



運営

法人名     一般社団法人新しい贈与論
代表理事    桂大介
設立      2019年8月1日
ウェブサイト  https://theory.gift
連絡先     info@theory.gift
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 「新しい贈与論」は寄付や贈与についてみなで学び、実践してゆくコミュニティです。オンラインの交流をベースに、時折イベントや勉強会を開催します。個人主義や交換経済が蔓延り、人間や人間的関係がますます痩せ細ってゆく現代において、今一度、贈与という観点から社会について考え行動する場をつくりたいと思います。